行政書士講座の講師ブログ

大陸法系と英米法系

今回も誌上講義です。基礎法学でも頻出の大陸法系と英米法系の相違について、簡単にご紹介します。

大陸法系と英米法系の聞には、伝統的にかなり相違が見受けられます。

もちろん、時代が経るにつれて、両者は融合傾向が進み、現在では、程度の相違に過ぎなくなっているものもあります。日本は、大陸法系の骨格を維持したまま、英米法系の影響も受けているというハイブリッドな法体系にあるので、特に両者の考え方を同時に有している場合が多々あります。

(1)何を主たる規範とするかについて
大陸法系では、成文法主義がとられ、議会や政府が作る高度に体系化された制定法が第一次的法源として、すべての法領域で尊重されます。
これに対して、英米法系では、判例法主義がとられ、裁判所で作り上げられた判例に先例的拘束力が認められ、判例が第一次的法源とされています。

(2)裁判所の体制について
行政優位の法運用体制がとられた大陸法系のフランスやドイツでは、司法裁判所とは系統を異にする別個の行政裁判所が設置され、行政事件を扱い、行政内部での監督統制が重視されてきました。
これに対して、伝統的なコモン・ローによる法の支配の確立がめざされた英米法系では、行政に関する事件も通常の司法裁判所の裁判権に服し、司法権の優越が制度的に保障されてきました。

(3)法の運用主体
大陸法系のフランスやドイツでは、最初から裁判官として採用し、裁判所内部で、訓練・養成する職業裁判官制(キャリア・システム)がとられています。
これに対して、英米法系では、弁護士その他の法律家として相当期間経験を積んだ者から裁判官を選任する法曹一元制がとられています。

(4)国民の司法への参加
大陸法系のフランスやドイツでは、現在では、参審制をとっています。参審制は、刑事訴訟において、一般市民から選出された参審員と職業裁判官がともに評議を行い、事実認定及び量刑判断を行う制度である。参審員の選出方法や任期は国によって異なる。日本の裁判員制度も、この参審制を参考にして立案されたとされています。
これに対して、英米法系では陪審制をとっています。陪審制とは、民間から無作為で選ばれた陪審員が、刑事訴訟や民事訴訟の審理に参加し、裁判官の加わらない評議によって事実認定と法の適用を行う司法制度です。