行政書士講座の講師ブログ
消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律

皆さん、こんにちは!

フォーサイト専任講師・行政書士の福澤繁樹です。

今回は、「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」について書いてみたいと思います。

この法律は、2013年(平成25年)4月19日に国会に提出され、同年12月4日に可決・成立しました。

その後、2013年(平成25年)12月11日に平成25年法律第96号として公布され、2016年(平成28年)10月1日から施行されています。

この法律は、消費者トラブルに遭ったときの消費者の対応について、消費者と事業者との間には情報の質・量・交渉力の格差があること、訴訟には時間・費用・労力がかかり、少額被害の回復に見合わないことなどを考慮して泣き寝入りする人が多いことに鑑みて、設けられたものです。

仕組みとしては、内閣総理大臣が認定した特定適格消費者団体が、第一段階として訴訟を担当して、事業者の責任を確定し、被害にあった消費者は、その第一段階を前提として個々の被害額を請求する第二段階から参加するというものです。

消費者は、第一段階の手続の結果を踏まえて、最終的に裁判に勝てるか否かの見通しをある程度立てたうえで、第二段階の手続への加入の有無を決めることができるため、泣き寝入りの減少が見込まれます。また、消費者が個々に訴訟を起こす場合に比べて時間・費用・労力が大幅に軽減することになります。

この制度が話題になったのは、2020年3月の裁判の影響が大きいです。

この裁判は、東京医科大の不正入試問題について、東京の特定適格消費者団体が原告となり勝訴しました。

しかし、この法律による救済は、消費者が実際に負担した金銭が主となるので、それ以上の損害賠償などはできない仕組みとなっています。報道によると、裁判では、受験料の返還義務は認めたが、半面、受験にかかった旅費、宿泊費の返還請求は却下されたということです。

上記の様に、まだまだ消費者の救済という点では課題がある制度ですが、消費者の泣き寝入りを防ぐために、どんどん制度改正をしていってほしいと思います。

今回は、このへんで。