東大生ベトナム研修プロジェクト2016

ベトナム研修 2日目

ホーチミン市からチャーヴィン市へ

8月8日、ホーチミン市から車で4時間、フォーサイトが建設を支援しているタップガイC小学校の着工式が行われる、チャーヴィン市に到着する。この地域はベトナムの格差を如実に反映した、貧困エリアにあたる。生い茂る熱帯の木々、道は舗装されておらず、歩くのにも苦労する。つい数時間前に過ごしたホーチミンとのギャップを、全員が肌で感じる。
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東大生の報告書より

島田さん 文科三類2年 島田さん
日本人のほとんどが訪れたことがないであろうこの地で、そのまさに「実情」を見て、聞いて、感じてきた。それは、日本であまりに恵まれた生活を享受し、高度な教育を受けてきた我々が、普段の生活ではまず気付くことのない世界の盲点であり、無意識に無視してしまっている現実であった。

タップガイC小学校へ通う生徒宅を訪問

段々と細くなって行く道路から車を降りて、猛暑と高湿度の中歩くこと30分。タップガイC小学校へ通うお子さんのお宅を訪問させていただく。家族構成は、病気で動けないお婆さんとお爺さん、そしてミーリンちゃん(9歳)。母親は彼女が赤ん坊の頃に家出、父親もホーチミンへ出稼ぎに出たまま帰ってきていない。初めて見るであろうカメラと多くの日本人に緊張しながらも、「おじいちゃんと、おばあちゃんを養えるようになりたい」とミーリンちゃんは話してくれた。彼女は勉強がとても好きで、将来は数学の先生になりたいという。

もうお一人、お話しを伺ったテュエンちゃん(8歳)も、学校が大好きで一生懸命勉強をしている。先ほど訪問したミーリンちゃんと同じで、将来は先生になりたいと思っている。家計が苦しいため、テュエンちゃんのお姉さんたちは、学校を中退して働きに出たり、親戚の家で生活をしている。お父さんは、彼女が最後まで教育を受けられることを強く願っている。

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東大生の報告書より

栂野さん 文科一類2年生 栂野さん
チャーヴィンの中でも、彼女たちの家庭環境は決して良いものとは言えず、衝撃を受けることが多くありました。その中でも一番衝撃的だったのは、通学路です。一人目の女の子の家から最寄りの学校までの距離の長さは想像以上で、まさに道なき道を行くといった感じでした。(履いていったスニーカーは泥まみれになりました)受ける教育自体の質だけではなく、教育を受けるためのインフラの質にも地域毎・家庭毎に格差が存在していました。格差の問題は僕が想像していたよりも根深く複雑な問題だと痛感しました。

タップガイC小学校、着工式に参加

タップガイC小学校に現在ある校舎は 、1980年代に建設され老朽化が激しく、子どもたちが満足に勉強できない状況になっている。屋根はトタンで、天井はない。雨の日は騒音がひどく授業が滞るほどだという。机・椅子・黒板も不足していて、校舎のあちこちにひび割が見える。今回のフォーサイトの支援により、校舎は新築され、机などの備品も整うこととなる。2016年内には完成する予定で、私たちも開校式で再度現地を訪れるのを楽しみにしている。
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現地の先生方からのお言葉

フォック校長フォック校長先生

「タップガイは、みなさんがご覧になってきたように都市部から離れていて、様々な困難な状況があります。この度、4教室の新校舎を建設することができますこと、心より感謝申し上げます。 新しいきれいな環境の整った教室ができることで、これからの教育活動にいろいろなことができる可能性を頂きました。ずっと大切に使い続けることをお約束いたします。先生たちはみんな、教育の質をあげたいと願っています。ぜひほかのプロジェクトにもご支援をいただければと思います。」

クオン(ティウカン郡)教育長クオン(ティウカン郡)教育長

「みなさまは今朝、家庭訪問や村を見学されてお分かりになったと思いますが、経済的に足りていない部分が多くございます。学校も30年前に建設されたもので、先生方も頑張りたくても設備不足のためにできないことがあります。このたびの皆さまのご支援、本当にどうもありがとうございます。 この度の支援で設備が整い、子供たちは勉強して自分の将来をひらいてゆくこと、地域を発展させることを約束いたします。これからも一緒に歩んでまいれたらと願っております。」

タップガイC小学校の生徒との交流

話を聞かせてくれたミーリンちゃんたちも通うこととなる、新校舎。東大生も着工式に参加させて頂き、「学校があり、安心して勉強ができる」という日本では当たり前の幸せを再確認する。

着工式の後は、現地の小学生たちとのアクティビティとして大縄跳びや「じゃんけん列車ゲーム」を行う。慣れない外国に加え、炎天下の中を歩いたことで疲労が滲み始めた東大生も、笑顔で子どもたちと触れ合う。口々に「子どもたちのエネルギーに圧倒された」と驚きの表情を見せる。「日本人よりもベトナム人の方が〝生きていて楽しそう〟なんです。」決して物質的に恵まれているとは言えないベトナムのリアルな生活を見た上で、それでも日本の若者はそう感じた。

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東大生の報告書より

島田さん 文科三類2年 島田さん
私たちの多くはベトナムで直接教育に携わることはできないが、このような間接的な形で支援することは十分可能である。今回その支援の成果を見て、支援を受けた人々と交流したことで、今まで漠然としていた海外支援という言葉がまるで目の前で転んだ友人を助けることのようなリアルさを帯びるようになった。支援が必要な子供たちはリアルとしてそこに存在していて、私たちにもやれることは確かにあるのだ。
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