実務家密着取材

直撃インタビュー
行政書士 尾久陽子さん

行政書士   尾久陽子 さん

1970年生まれ。東京都出身。1993年に早稲田大学第二文学部演劇専修を卒業。その後、2002年まで演劇活動を行い、2003年から仙台の法律事務所に勤務し医療過誤や消費者問題等のケースを扱う。2006年に都内の法律事務所へ移り、行政書士登録をした2007年に独立。2008年にはファイナンシャルプランナーの資格を取得し、家族法務業務も行う。さらに保育士、ホームへルパー2級の資格をいかし、多種多様な顧客案件を扱っている。

「おぎゅう行政書士事務所」のホームページは下記のとおりです。
URL : http://www3.plala.or.jp/ogyuyoko/


紙の上に止まらず、温もりのあるサービスを
行政書士は、顧客をフォローする“縁の下の力持ち”

試験に合格して資格を取得した後、実際にどのような仕事を行うのか。フォーサイトでは活躍中の実務家を直撃し、その実像に迫ります。今回は、行政書士の尾久陽子さんからお話を伺いました。

どのようなお仕事をされているのでしょうか


会社設立、各種許認可はもちろん、家族問題に関する法務事務、著作権に関する契約書作成等のサポートを中心に行っています。家族問題に関する法務事務というのは、具体的に言いますと、遺言、相続、離婚に関する書面作成です。家族の問題は、それぞれの生活や将来にかかわるもので、単に法的書類を作成しただけで解決するものではありません。私は行政書士兼ファイナンシャルプランナーとして、単なる法律手続きだけに止まらない、温もりのあるサービスをご提供しています。「戸籍を集めなければならないが、方法がわからない」、「手続きの途中で、経過や気持ちを文章にする必要があるが、作文は苦手」等のお悩みを持つ方のお手伝いもしています。さらに、演劇に携わっていた私自身の知識・経験をいかし、音楽・放送・舞台等、表現活動に携わる方の会社設立や記帳代行、著作権等に関する契約書作成、権利処理手続きを総合的にフォローしています。


温かく、柔らかい雰囲気を持つ尾久さん

温かく、柔らかい雰囲気を持つ尾久さん


行政書士の資格を取ろうと思ったきっかけは何ですか


行政書士にいたるまでの道のりは、平坦ではありませんでした。かなり変わっている経歴だと思います。私は大学卒業後、演劇養成所に入りました。演劇活動の傍らさまざまな職業に就いたのですが、一度リセットしようと住みなれた東京を離れました。仙台でたまたまご縁があり、法廷に提出する陳述書の書記を募集していた法律事務所の事務員になりました。そこではさまざまなクライアントから持ち込まれる行政事件や、医療過誤、消費者問題等に取り組みました。一方で、事務員の仕事をしつつ、保育士の資格を取りました。自分を表現し、密な人間関係を築ける仕事を求め、ホームヘルパー2級の資格を取ったりもしました。その後東京に戻り、立川の法律事務所に勤務し、法的知識の必要性を感じ、行政書士の勉強を本格的に始めました。そうしているうちに「自分の名前を出し、お客様に対して誠意と責任を持って仕事をしたい」と思うに至り、独立を決意しました。現在は、表現する側の人たちのフォローをする身ですが、行政書士の仕事をするにあたり、いろいろな体験をして良かったと思うことが多いですね。


演劇の世界から法律の世界へ

演劇の世界から法律の世界へ


独立されてから、どのように仕事を進めたのでしょうか?


私が独立したのは2007年です。設立当初から弁護士事務所でお手伝いしたり、人脈を広げるよう、積極的に行動していました。たまたま知人から紹介された「著作権ビジネス研究会」に所属したところ、著作権処理を担当する行政書士を探している放送局があり、そちらの仕事をすることになりました。そして独立から1年後、相続がらみの案件に対応できるよう、ファイナンシャルプランナーの勉強をして、資格を取りました。FPの業界では、セミナーやイベントに参加できる機会も多くあります。そういうつながりから「金融実務研究会」にも入ることになりました。勉強会や研究会に入ることで得るものは多いと思います。現在、さまざまなつながりからご縁が生まれた弁護士、税理士、中小企業診断士など他士業の方々と連携して仕事をしています。特に、法律事務所に持ち込まれる相談の中には相続人調査、公正証書の作成等、行政書士も出来る仕事が多々あります。つながりをいかし、連携して作業することはとても合理的ですし、お互いのメリットにもなっていますね。


異業種で行っている朝食会にも参加

異業種で行っている朝食会にも参加


お仕事の際に気をつけていることは何でしょうか?


お客様には、なるべくわかりやすくシンプルに説明するようにしています。お客様が優先したいと思うことがらを整理し、「お互い段取りよく進めるためにはどうしたらいいか」ということを常に念頭に置いて行動しています。目的を達成するために、「いつ、どこで、何をやるべきか」を考えていますね。行政書士の仕事は期限に間に合わなければ大きな損失が出るケースも多々あります。クライアントの事情を考慮し、お互いの信頼関係を築きながら仕事をするようにしています。また、芸術・芸能・興業関係の案件の中にはさまざまな権利関係の処理が必要ですが、実際は口約束で話が進み、事後に契約・支払い関係のトラブルが発生することもあります。クリエイターや現場の方々が事務処理に煩わされず、安心して作品に集中できる環境をととのえるように努力しています。


「クリエイターが本業に集中できるように」と話す尾久さん

「クリエイターが本業に集中できるように」と話す尾久さん


今後の予定や夢は何でしょうか


人間関係を築き、継続的にコミュニケーションをとることが好きなので、ゆくゆくは「連合」のような組織を作りたいと考えています。仕事は人間関係の中で行うものです。一人で出来ることには限界があります。多くの人の力を合わせれば、よりよく進む場合が多々あります。私自身女性ですので、今後は女性の社会進出を応援していきたいと思います。現在も女性の起業支援を行っていますが、困った時に思い浮かべてもらえる存在になれればと思いますね。これまで私自身、紆余曲折を経てきたので、いろいろな経験をいかして紙切れ一枚にとどまらない仕事をしたいと思います。また、プライベートでヘルパーの仕事を不定期でやっています。今後は演劇をからめてボランティアでも何か出来ればと考えています。


行政書士を目指して勉強をしていた時は私自身、何がどう役に立つのか見えない部分がたくさんありました。特に一般知識や法学、行政法全般はあまり興味深く感じられず、よくわからないと思っていました。けれど、実際に行政書士となり仕事をしてみると、一番必要な知識だと気づきました。肌感覚として一般知識を身につけていないと、仕事としてやっていくのは厳しいと思います。つらいかもしれませんが、基本を身につけて頑張って欲しいと思います。


行政書士   尾久陽子 さんの、ある1日


ある日のスケジュール

5:30

起床

メールチェック

6:50

朝食会

週に一度の異業種仲間との交流朝食会

9:00

外出

会社設立のセミナー打ち合わせ

11:00

外出

法務局で証明書取得

13:00

個別訪問

顧客と打ち合せ

16:30

外出

都庁へ許可申請

17:00

休憩

食事

18:00

帰社

書類作成

21:00

帰宅

メールチェック等

24:00

就寝