実務家密着取材

直撃インタビュー
社会保険労務士 小田栄治さん

社会保険労務士   小田栄治 さん

1972年生まれ。埼玉県出身。1994年に大学卒業後、外資系製薬会社に入社。医薬情報担当者として勤務し、1996年に都内の社会保険労務士事務所へ転職。2001年度の試験で社会保険労務士試験に合格し、2005年に小田社会保険労務士事務所を設立。2008年に特定社会保険労務士試験に合格し、現在に至る。

小田社会保険労務士事務所が運営するホームページは下記のとおりです。
URL : http://odajimu.com


社労士ビジネスの基本は“ヒト”
会社と共に成長する労使バランスの調整役

試験に合格して資格を取得した後、実際にどのような仕事を行うのか。フォーサイトでは、活躍中の実務家を直撃し、その実像に迫ります。今回は社会保険労務士である小田栄治さんからお話を伺いました。

どのようなお仕事をされているのでしょうか


基本的に助成金、給与計算、就業規則など企業の総務をトータルサポートしています。助成金や就業規則はスポット案件として引き受けることもありますが、私の場合大半は顧問契約ですね。社会保険・労働保険の事務書類の作成、申請手続きの代行から、労務管理相談や退職金制度、就業規則の見直し、高齢者の雇用管理サポート、官庁調査立会いなどのコンサルティングもしています。顧客は首都圏にある飲食チェーン、病院関係、製造業、IT企業、サービス業の方が多いですね。私の事務所では、給与計算、勤怠管理、人事管理のデータを収集し、各企業に応じたソリューションモデルを組み込める最新システムを導入しています。「データの厳格な管理・共有ができるので、より効率的な仕事が出来る」とお客様からも好評です。


セミナーの講師をすることもあるという小田さん

セミナーの講師をすることもあるという小田さん


資格を取るまでの歩みを教えてください


私は社会保険労務士になるまで、少し時間がかかっているんです。もともと法知識を身につけるべく大学に入りましたので、労働法や労使関係に対する興味や関心はありました。卒業後、外資系の製薬会社に入社して医薬情報担当の営業職に就きましたが、諦めきれない思いでいました。その時に縁があった社会保険労務士事務所へ転職しました。「現場で働きながら社労士を目指す方が、仕事をしっかり覚えられる」と、実務の経験を積み重ねながら試験勉強をしました。勤務先は労働保険事務組合を持つ大きな事務所でしたので、20社~40社のお客様を担当させていただきました。試験には何度もチャレンジしてやっと合格しました。振り返ってみると、勉強している間に得たものは多く、今の自分の基礎になっていますね。


現在は池袋に事務所を構える

現在は池袋に事務所を構える


開業のきっかけは何でしょうか?


私が独立したのは33歳のときです。社労士の試験勉強をしている頃から、「ゆくゆくは、ひとり立ちをしよう」と思っていました。しかし、勤務していた事務所が、とても良い事務所でしたので、その環境に甘えてしまい、つい独立するきっかけを掴みかねてしまいました。そして、試験に合格して2年が経ったとき、お客様から後押しされるように独立しました。“暖簾分け”というパターンは滅多にない業界なので、一種“賭け”のような気分でしたね。いざ独立してみると、本当に応援してくださるお客様もいらっしゃって、大変ありがたく思いました。開業当時からサポートしていただいている税理士の方は、現在も大事なビジネスパートナーです。


「案件は既存のお客様からのご紹介が多いですね」と話す小田さん

「案件は既存のお客様からのご紹介が多いですね」と話す小田さん


仕事の魅力、やりがいは何でしょうか?


ヒトを相手にする職業ですし、採用から退職までの労働及び社会保険に関する諸問題を取り扱うため、非常にセンシティブです。そこで大事なのは相互のコミュニケーションだと思います。私は経営者と直接お話をすることが多いのですが、経営者と労働者、双方の気持ちを理解し、斟酌できる社労士でありたいと思っています。ですから、会社の中でトラブルが起きた際に、経営者、労働者、双方とお話し、ご納得いただけたとき、とてもやりがいを感じます。社労士は経営者の味方であると同時に、労働者の味方でもあります。労使関係のクッションになることで、会社、労働者にとっての最善を尽くしたいと考えています。


労働法関連の書籍が豊富

労働法関連の書籍が豊富


社労士としての自覚、必要なものは何だとお考えでしょうか?


大事なのはバランス感覚ですね。社労士ビジネスの基本は、ヒトとヒトとの関係です。「社労士は口を開くと、金がかかることしか言わない」などと世間で言われることもありますが、法律と福利厚生、対人関係のバランスを考えなければならないと思います。完璧な人間がいないのと同様に、完璧な会社は存在しません。法律を守りながら、会社の成長に応じて、ひとつひとつの仕組みを作っていくことが私の仕事だと考えています。私は同業者間の勉強会、労務監査に関する研究会、異業種交流会などに積極的に参加するようにしていますが、業界内外のさまざまな考え方を吸収することで、モチベーションを高め、楽しく仕事ができるようにしたいと思っています。単なる法務の情報提供者というのではなく、お客様にとって何かしら付加価値を感じていただける社労士でありたいですね。


趣味のバドミントンでも大活躍の小田社労士

趣味のバドミントンでも大活躍の小田社労士


私は社労士になるため何度となくチャレンジし、やっと合格を果たしました。せっかく資格を持っていても開業しない人もいますが、苦労して資格を取るのなら、ぜひ商売としても考えていただきたい。商売として成立させるなら、勉強中から「この資格で食べていく」という心意気を持つことが重要だと思います。片手間に出来る仕事、楽な仕事という考えではなく、本気で社労士の社会的地位を向上させるために、頑張ってほしいと思います。合格して是非一歩、踏み出してほしいですね。一緒に頑張りましょう!