実務家密着取材

直撃インタビュー
社会保険労務士 冨樫晶子さん

社会保険労務士   冨樫晶子 さん

1972年埼玉県戸田市生まれ。1995年に城西大学経済学部を卒業後、食品メーカーに営業職として勤務。その後ゲームメーカーに転職し、経理と営業事務を担当。その後ゲーム関係の商社に転職し、出産のため退職。2002年に行政書士試験に合格し、社労士・行政書士事務所に勤務。その翌年社労士の試験に合格し、2005年に社会保険労務士法人に組織変更。2006年に独立・開業し、「アキ・オフィス」を立ち上げ、今に至る。

冨樫晶子さんが代表を務める「アキ・オフィス」のホームページは下記のとおりです。
URL : http://aki-office.com


「スッキリ!」納得されるレスポンスを
柔らかい目線をいかした女性社労士

試験に合格して資格を取得した後、実際にどのような仕事を行うのか。フォーサイトでは、活躍中の実務家を直撃し、その実像に迫ります。今回は社会保険労務士・行政書士である冨樫晶子さんからお話を伺いました。

どのようなお仕事をされているのでしょうか


私は行政書士、社労士と両方の資格で開業していますが、社労士業務の割合は9割です。主な業務内容は、社会保険や労働保険の手続です。最近では障害年金手続、助成金の申請などの案件も多く手がけています。開業以来約200社の社会保険・労働保険の手続やご相談、給与計算等の案件に携わってきました。私は簿記やファイナンシャルプランナー資格も持っており、会計税務の知識もあるせいか、数字から見た経営のアドバイスを求められることも少なくありません。また、同じ女性である経営者、ご担当者からご依頼いただくケースもよくあります。


法律だけでなく会計税務の知識も有する冨樫さん

法律だけでなく会計税務の知識も有する冨樫さん


資格を取得したきっかけを教えてください


一番のきっかけは、離婚と出産です。生まれてくる子供を女手一つで育てなければならないという事態に直面したとき、「ただ単にOLに戻るのでは厳しい…」と思いました。そこで、「何か手に職を持ちたい。資格を武器にできたらいいな。」と思ったのです。しかし、「資格を取れば、食べていける」という甘い考えはありませんでしたね。最初は税理士を目指すことを視野に入れたのですが、試験内容や勉強時間を現実的に考え、悩んだ末に行政書士から始め、最終的には行政書士と社労士の資格を取ることができました。


冨樫さんは社労士の他にもさまざまな資格を持つ

冨樫さんは社労士の他にもさまざまな資格を持つ


社労士としてのキャリア、歩みについて教えてください


2002年に行政書士の資格を取りました。しかし、最初から「それだけで食べていくのは難しい。」と思っていたので、すぐに社労士の勉強を始めました。勉強しながら就業できる場所を探しているうちに、地元の社労士・行政書士事務所で求人があるのを知って応募し、修行をさせていただきました。アルバイトしながらの1回目の社労士試験は不合格に終わりましたので、「次は絶対に落ちるわけにいかない」と思い、2ヶ月限定の社労士事務所の補助業務に転職し、試験前は勉強に集中した結果、2回目で合格することができました。すると、その会社の中で開業登録することとなり、その後社会保険労務士法人へ組織変更し、社員社労士として働くことになりました。約3年半、社労士業務全般のノウハウを身につけ、様々なタイミングが整った2006年に独立開業しました。


開業してから、どのようにお仕事を進めていきましたか?


勢いで開業したものの、当初はお仕事が全くない状態でした。「これではいけない。」と思い、空き時間を利用して、派遣や日雇いの仕事も並行してやっていましたね。開業前から異業種交流会等を通じて人脈作りをしていたのが功を奏したのか、友人や知人からご紹介を受ける形で少しずつ仕事が広がっていきました。その中でも特に多かったのが、税理士さんからのご紹介です。ちなみに最近では、ホームページやブログを経由してお客様が増えるようになりました。


「特に税理士からの紹介案件が多い」という冨樫さん

「特に税理士からの紹介案件が多い」という冨樫さん


お仕事のやりがいは何でしょうか?


営業職の頃は、お客様から断られることが当たり前という世界でした。顔を合わせると露骨に嫌な顔をされたり、門前払いされることもよくありました。しかし、今の仕事では、お客様から感謝されることが大半です。「ありがとう」「助かった」とおっしゃっていただけるのは、本当に励みになります。また、会社員の頃は「身分や収入が安定していていい」と思っていましたが、今は多少リスクがあっても、頑張れば頑張った分報われるこの仕事が自分に向いていると思います。


冨樫さんの趣味はマラソンとゴルフ

冨樫さんの趣味はマラソンとゴルフ


お仕事される際に気をつけていることは何でしょうか?


社労士業務は、経営の4大資源といわれる『ヒト・モノ・カネ・情報』の中で唯一感情を持つ「人」の部分を扱います。つまり、それぞれの案件がデリケートです。ですから、杓子定規にならずに柔軟な対応を心掛けています。また、難しい法律用語は避け、お客様にわかりやすくお話しするようにしています。「人材」は、関わり方次第で「人罪」にも「人財」にも変化します。経営者と社員が心地よく働ける環境がつくれるよう、一緒に悩んで解決していきたいと考えています。


職住接近でワークライフバランスを保つ冨樫さん

職住接近でワークライフバランスを保つ冨樫さん


社労士の自覚、必要と感じる資質は何でしょうか?


お客様の言いたいことをよく聞き、それをよく理解し、それに対してアドバイスをするということが社労士の重要な仕事ですから、人とのコミュニケーション能力が強く求められます。また、『先生』と言われる職業ではありますが、それに甘んじることなく思いやりの心を持って接することが大事だと思います。『実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな』ということわざがありますが、まさに私の行動指針です。いつでも謙虚に、そして質問や相談に対しては専門家として適切な回答をすることが必要ですね。



行政書士、社労士は共に諦めなければ絶対に受かる資格だと思います。ただ、「資格を持っただけで食べていけるか?」ということに関しては、難しいところだと思います。士業は開業3年未満の廃業率が80%というデータも聞いたことがあります。資格取得はあくまで通過点で、活かすも殺すも自分次第だと思います。何事もやってみなければわかりません。是非、チャレンジしてみてください!


社会保険労務士   冨樫晶子 さんの、ある1日


ある日のスケジュール
7:00 起床 朝食
8:30 出社 メールチェック
9:00 外出 ハローワークへ手続き申請
10:00 個別相談 就業規則について打ち合わせ
12:00 昼食  
13:00 社内 助成金についての書類作成
15:00 社内 就業規則についての書類作成
16:00 外出 お客様訪問
20:00 退社  
20:30 帰宅 食事
21:00 自宅 風呂、新聞チェック、読書、明日の準備
24:00 就寝