実務家密着取材

直撃インタビュー
社会保険労務士 印牧政彦さん

社会保険労務士   印牧政彦 さん

1963年兵庫県生まれ。奈良県出身。1985年に大学卒業後、パイオニアコミュニケーションズ株式会社に入社。回路設計、商品企画を担当後、約12年労働組合役員の職務に就く。1999年社会保険労務士の試験に合格。その後も、約25年間にわたって同社に勤務し、早期退職。その後、2008年に社会保険労務士として独立開業し、現在に至る。

印牧政彦さんが代表を務める 「かなまき社会保険労務士事務所」のホームページは下記のとおりです。
URL : http://www.kanamaki.com


会社と従業員のパイプ役としての実績をいかし独立開業
労働組合で委員長も務めた個性派社労士

試験に合格して資格を取得した後、実際にどのような仕事を行うのか。フォーサイトでは活躍中の実務家を直撃し、その実像に迫ります。今回は、社会保険労務士の印牧政彦さんからお話を伺いました。

どのようなお仕事をされているのでしょうか


主な業務内容としては、就業規則の作成と活用、人事制度の構築、労働、社会保険手続きの代行業務、労使トラブルの解決、相談、各種助成金の申請代行等です。仕事はスポットで受ける案件よりも、顧問として依頼されるケースが多いですね。各種手続きの代行だけでなく、人事・労務についてのご相談に対応し、お客様のニーズを把握しながら、リスクを最小限にするための就業規則の作成ポイント、労働法や公的年金の抑えるべきポイント、助成金の活用法等についても提言しています。


印牧さんのオフィスは埼玉県入間市にある

印牧さんのオフィスは埼玉県入間市にある


社労士の資格を取ろうと思ったきっかけは何ですか


入社後は回路設計や商品企画といったものづくりの現場に勤務していました。その後、設立3年目の労働組合役員にお声掛けいただき、会社と従業員とのパイプ役として働くことになりました。それまで、全くといってよいほど労働法とは程遠い分野にいたので、法律知識は皆無でした。「何が正しくて、何が間違っているのか」といったことを、法的に客観的に論じる必要性を感じ、1995年から社労士の勉強をスタートしました。1年目は勤務の傍ら、通学で勉強しましたが、それ以降は通信教育と独学でカバーし、4回目のチャレンジで合格しました。


1999年の試験で社労士に合格

1999年の試験で社労士に合格


独立のきっかけは何でしたか?


直截のきっかけは、会社内における転身支援制度です。本人が任意で選べるのですが、40歳、45歳、50歳というタイミングで退職をすると加算金が出るというものです。社労士の資格を得てからは、社内で積極的にアピールし、相談を受けるのが本業よりも楽しくなってきたというのも一因です。12年ほど携わった労働組合では、執行委員からスタートし、最後は委員長という立場にもなったのですが、「自らの責任で自分の力を試してみたい」という思いで独立開業しました。


足かけ12年労働組合に在籍

足かけ12年労働組合に在籍


独立してから、どのように仕事をしましたか?


実際に退職する1年ほど前から、独立開業のハウツー本やサイト、成功者の体験談を読みあさりました。私は25年にわたりひとつの会社に勤め続けていたため、独立開業に必要なノウハウがありませんでした。そこで、有資格者向けの開業講座に通ったりもしました。社労士事務所にインターンしようかとも思いましたが、一から自分でスタートすることにしました。まずは告知ということで、ホームページを立ち上げ、FAX-DMをひと月おきに、1000通程度出しました。3か月目くらいで反応があり、成約に結び付きました。4月に開業して、顧問先を初めて取れたのは8カ月後…。「開業後1年くらいは、貯えがあるから何とか乗り切れるだろう」と思いましたが、当時はかなり焦りましたね。その後、口コミや紹介で広がり出し、顧問先も順調に増えています。


印牧さんは社労士以外に無線の資格等も保有

印牧さんは社労士以外に無線の資格等も保有


お仕事をされる際に気をつけていることとは何でしょうか?


当たり前のことかもしれませんが、とにかく何でも「すぐにやる」ということです。仕事を貯め込むと効率が悪くなります。メールを出す。電話をする。お客様に会いに行く。相談に応じる。聞かれたことに回答する。必要な書類を提出する。一事が万事、すぐ取り組むことで、頭の中も、机の引き出しも、整理しやすくなります。独立すると、スケジュールでも何でも自分で決められる半面、自分が動かなければ前には進みません。「早く正確に」というのは仕事における心構えの基本中の基本だと思いますし、いつもそのように心がけています。


社労士に必要な資質とはどういうものでしょうか?


社労士に第一に求められるのは、一般常識だと思います。どこにも働いた経験がないというよりは、ひとつの会社に勤務経験がある人の方がよいのではないか、と私は思いますね。士業では「専門性を持たなければならない」ということがよく言われますが、「浅く広く」というスタイルもあります。また、社労士は企業のトップや経営者の方たちと直に接する仕事ですので、最低限人の話を聞くという能力も求められます。人それぞれ自分のスタイルというものがあります。枠にとらわれず、仕事をしながら必要なスキルを身につけていけばいいのではないでしょうか。


社労士は、試験問題も難解ですし、取得するのが大変だと思いますが、会社員を続けながら取れる資格に間違いありません。諦めず何度も真剣にチャレンジすれば、きっと合格できると思います。人が会社で働くかぎり、需要がある資格だと思います。是非、頑張ってください!


社会保険労務士   印牧政彦 さんの、ある1日


ある日のスケジュール
6:00 起床 TVニュース・新聞チェック
7:00 朝食  
9:00 出勤  
10:00 個別相談 クライアントと助成金について打ち合わせ
12:00 昼食  
13:00 外出 川越のハローワークへ助成金の申請
14:00 帰社  
16:00 社内 書類作成
18:00 退社  
20:00 夕食  
21:00 仕事 翌日必要な書類の準備
22:00 就寝