実務家密着取材

直撃インタビュー
社会保険労務士 高田順司さん

社会保険労務士

高田順司さん

「記録だけでなく、記憶に残る仕事を」
会社と従業員の絆作りをサポート

1993年 明治大学経営学部経営学科を卒業
1993年 「サカタのタネ」に就職
1999年 社会保険労務士事務所に転職
2000年 社会保険労務士資格取得
2002年 高田社会保険労務士事務所を開業


URL : http://www.office-takada.biz

高田順司さんは社会保険労務士として、就業規則や退職金制度の見直し、是正勧告の予防・対応を中心に活動しています。現在の仕事の基盤をつくったのは、大学卒業後に就職した園芸関連企業での勤務経験だそうです。植物の生産管理部門のチームリーダーとして、スタッフをまとめ上げてきました。そんな高田さんは、どのような思いで社会保険労務士をめざすようになったのでしょうか。資格取得から独立、開業後の苦労、仕事へのプライド、ご家族と過ごす気分転換などについてお話しいただきました。

スタッフが気分よく働ける環境づくりを

大学を卒業して「サカタのタネ」に入社した高田さんは、1年間の研修後、植物の生産管理部門に配属。チームリーダーとして、スタッフをまとめ上げる立場に任命されました。新しく設立された部署だけに、試行錯誤しながら仕事に取り組んでいたそうです。

「花や野菜の苗などを農家に卸すことが、生産管理部門の業務でした。なにしろ植物ですから、納期どおり出荷することがとても難しい商品なんです。病害の発生によって納品できなくなってしまうこともあります。生産管理は想像以上に苦労の絶えない仕事でした」

この部署では顧客からのクレームにも対応していました。苗が育たずに納品できなかったり、苗に虫が付いていたりなど、日常的にさまざまなケースで苦情が発生します。そういった状況に適切な対処ができるよう、高田さんは奮闘する日々を送っていました。

「業務が業務ですから、職場には常に緊迫感がありました。それだけに、部署のみんなが気分よく仕事できるような環境づくりが必要です。はじめは手探りでしたが、そういった流れからマネジメントや組織づくりに興味をもち始めました」

激務のなかでいつスタッフの誰が休んでもフォローできるよう、仕事の共有化システムを構築。当時まださほど普及していなかったITも積極的に導入し、職場環境を改善していきました。この経験が、社会保険労務士となった今も大きく役立っていると、高田さんは振り返ります。


最初は、勤務社労士からのスタート

その後、神奈川県内に新規形態の店舗が出店する際、売り場を担当することになりました。ここでも現場スタッフがやる気を出せるよう、マネジメントや組織づくりを工夫した高田さん。このころから本格的に社会保険労務士の資格を取得しようという意欲がわいてきます。

「社労士試験の勉強は在職中に始めましたが、本腰を入れたのは会社を辞めてからです。ただ、初めての試験は落ちてしまいまして。その後、求人誌などで転職活動をして、社労士事務所に採用されました。じつは、そこの所長さんが、私に試験勉強の資金を援助してくださったんです」

そのサポートに応えようと、事務所の仕事をこなしながら、勉強にも一生懸命励みました。資格試験予備校の講座も受講しましたが、平日の勉強は電車のなかが中心。往復およそ2時間の通勤時間は、勉強に集中する毎日だったそうです。休日は自宅で5時間ほどの勉強時間を確保。そして、2度目のチャレンジとなった2000年の試験で合格を果たしました。

「試験に受かってからも、しばらくは社労士事務所にそのまま勤務していました。といいますのも、最初から独立開業を考えていたわけではなかったんです。まずは企業内の社労士をめざしていましたので」

ところが、時がたつにつれ、自分のやりたい業務にシフトしたいという気持ちが強まってきた高田さんは、ついに独立開業を決意します。神奈川県横浜市内に「高田社会保険労務士事務所」を開設したのは、2002年6月のことでした。


不安な心を抱え、やみくもに動き回った開業当初

「仕事の受注やセミナーの開催など、一切を自分の名前で行うことを望んでの独立でしたが、友人たちには報告する心境になれなかったですね。事務所での実務経験があるとはいえ、いざ開業してみると、本当にひとりでやっていけるのかどうか、不安で仕方ありませんでした」

それでも、考えられる営業活動はすべて実行。飛び込みの訪問営業はもちろん、はがきや封書のダイレクトメール送付、ホームページ制作、同業者の集まりへの参加など、顧客開拓に力を注ぎました。

「総務職を募集している企業をハローワークで探して、ダイレクトメールを送るという手も試してみました。総務の人材を増員したいという会社であれば、社会保険の申請などに対応しきれなくて困っている可能性がありますから」

飛び込み営業の結果は芳しくなかったものの、ほかの営業活動では、それなりの成果を挙げることができたという高田さん。しかし、「軌道に乗ってきた」と思えるようになったのは、開業してから2年ほどたってからだといいます。

「人の話を聞いて整理することは得意なほうだと思います。また、生産管理部門の業務でリスク管理の経験がありますので、事前の対応のスキルが身についていることも、社労士の仕事には生かせているのではないでしょうか」

ご縁を大事に、人との絆を大事にした仕事運びを

顧問先に対しては、就業規則のメンテナンス、労務相談、労働保険・社会保険の手続き、社員研修、助成金申請などに関する業務を行うとともに、法改正や助成金関連の情報等をまとめたレポートを月1回送付。スポットの顧客には、就業規則の作成や見直し、退職金制度の見直しやハラスメント防止研修、採用適性検査などを中心に、業務を展開しています。

「開業間もなく飛び込みで営業した保険代理店から、数年たって『法人化したので社会保険に加入する手続きをお願いしたいのですが』と依頼がきたのは、驚いたのと同時にうれしかったこととして印象深いです。それまでは仕事のやり取りがなかったのに、私のことをよくぞ思い出してくださったなと。こういったこともありますから、人との絆を大事にした仕事運びは常に心がけています」

現在は横浜市戸塚区に事務所を構える高田さん。休日でもセミナーや情報交換会などに出席することも多く、忙しい社労士生活を送っています。たまの気分転換はやはり奥さまやお子さまと過ごす時間だそうです。特に卓球は家族3人で楽しめ、日頃の運動不足解消にもなっているとか。

「私の事務所には紹介も含めて業務の依頼が増えてきましたし、社労士は今後ますます必要とされる、将来性の豊かな仕事だと思います。それだけにお客さまの目も厳しくなってくるのは当然でしょう。自分が社労士として、お客さまに何を提供できて、どんな利益を与えられるのか、的確に伝えられるコミュニケーション能力をいっそうみがいていきたいですね」


社会保険労務士   高田順司 さんの、ある1日


ある日のスケジュール
1993年 明治大学経営学部経営学科を卒業
1993年 「サカタのタネ」に就職
1999年 社会保険労務士事務所に転職
2000年 社会保険労務士資格取得
2002年 高田社会保険労務士事務所を開業