2012 / 06
「バムとケロ」シリーズの絵本をご存知ですか。
絵本のコーナーで、どの書店でも平積みにされている、
おそらくとてもロングヒットしているカナダ在住の島田ゆかさんの作品です。
色がきれいで、細部までこだわったバムとケロの様子がいきいきと描き込まれていて、
見ていて飽きず、楽しい気持ちになる作品です。
1994年から、1、2年おきに現在5冊が出版されています。
先日、横浜のデパートで原画展が催されたので行ってまいりました。
その会場で島田さんがインタビューにお答えになる画像が流されていて、
色に対するこだわりを話していらっしゃいました。
色を決めるのに丸一日かかることもあるとのこと。
絵はガッシュ(不透明水彩絵の具)で描かれていますが、
同じメーカーの同じ色名の絵の具でも、
日本で売られている色とカナダで売られている色とは微妙に異なるのだとか。
そして、原画とともに、使われた色が何色と何色を混ぜて作った色か、
一覧にした色見本が展示されていました。
色彩のテキストでいう「色見本」と言うと、なんとなくつかみどころがなく
理解しにくい方もいらっしゃるかもしれませんが、これも「色見本」。
次回同じ場面を描くときに参考になさっているとのことでした。
個人的には、なぜカナダと日本ではガッシュの色みが違うのか、
追及してみたいところです。

スカイツリーが開業してその経済効果も話題になっていますが、
アサヒのビール(スーパードライまたはクリアアサヒ)に
東京スカイツリーの図柄が描かれたバージョンをご存じでしょうか。
このスカイツリーが、特殊なインクで描かれていて、温度によって色が変わるのです。
まだ冷えていない状態だと(常温)、スカイツリーのライティングカラー「粋」の水色で、
冷えていくにつれライティングカラー「雅」の紫色になっていくもの。
実際には、雅のイメージの紫はピンクに見えるので、色の世界では通例であった
冷たい→青
温かい→赤
とは逆の色設定となっているように感じます。
スカイツリーのライティングカラーを採用することはうなずけるのですが、
なぜ常温を紫、冷えたら水色としなかったのか、是非とも知りたいような・・・。
私事ではありますが、この缶、うっかり捨ててしまって後悔している今日この頃です。

日差しが強くなってきました。
日傘を愛用なさる方も多いかと思いますが、皆様は何色の日傘をお使いでしょうか。
以前は日傘と言えば涼しげな白が定番でしたが、
何年か前に紫外線をしっかりカットするためには黒の傘が良いことが分かって、
昨今は黒い傘が定番になりつつあります。
先日モネの「日傘の女」(オルセー美術館蔵)という作品を取り上げた番組を見ていて、
当時の日傘の構造が現在とは異なることを知りました。
現在はほとんどの傘が一枚の布で作られていますが、
この絵が描かれた1886年当時、日傘は内側にも別の布が張られ、
2枚重ねられてできていたとのこと。
この絵で緑色に見える傘は、内側に白を張った生地に、
外側の緑の生地の色が透けて見えていたのではないかということでした。
その当時、傘の内側の色を透かして
外側の生地の色が見えることを楽しむ文化があったのだとか。
日本では、平安時代の「かさねの色目」というすばらしい色彩文化が残っていますが、
西洋にもそんな風雅を楽しむ習慣があったことを知り、興味深く拝見しました。

先月、ニュースで話題になった、ガッツ・フィリーパイさんという方をご存じでしょうか。
旧ユーゴスラビアで生まれたガッツさんは、
大学在学中に紛争が起こってやむなく中退したものの、32歳の時に渡米して、
コロンビア大学で清掃員の仕事をしながら英語を学び、
同大学の授業料免除制度を利用して19年かけて
52歳で古典学の学士号を取得したとのこと。
遅くまで仕事をしながら学ぶという苦労の中に、学ぶことの素晴らしさを感じ取りました。
そして彼のモットーは、「豊かさはポケットの中ではなく心の中にある」。
今後は働きながら大学院をめざすというその「ガッツ」に、
身の引き締まる思いが致しました。
学ぶって尊い。
皆様にもどうぞ、楽しみながら、学習して頂けますように。
