ファイナンシャルプランナースペシャリストによるこっそり裏講義

今回からは、タイトルを「中小企業経営承継円滑化法」と変えて、あらためて
この法律の概要を解説していくことにします。
9月の試験を受検する人は、テキストに載っていない事項ですので、ここで
しっかり学習しておきましょう。

前回お話ししたように、中小企業経営承継円滑化法は、中小企業における
事業承継の円滑化を図るための総合的支援策の基礎となるもので、その支援策
には3つの柱があります。
今回は、そのうちの「遺留分に関する民法の特例」について解説します。

中小企業において、経営者が死亡した後、その後継者が安定的な経営を行って
いくためには、自社株式や事業用資産を後継者に集中的して承継させる必要が
あります。
しかし、先代経営者に複数の子がいるような場合には、後継者以外の相続人に
遺留分の権利があるため、結果的に、後継者に自社株式や事業用資産を集中
できないということが起こり得ます。
また、後継者が先代経営者から自社株式の生前贈与を受けた場合には、特別受益
として遺留分を算定するための基礎財産に加えられますが、その加えられる金額
は、贈与された時点ではなく、先代経営者の相続開始時点の評価額となるため、
贈与を受けた後継者の努力によって会社の業績が向上すると、株式の評価額が
上昇して、結果的に他の相続人の遺留分の額もアップしてしまうことになります。

そこで、中小企業経営承継円滑化法では、こうした遺留分の制約に対応するため
の特例を設けました。
この特例の適用を受けることができるのは、中小企業者(資本金や従業員数が
一定規模以下の会社または個人事業主)のうち、3年以上継続して事業を行って
いる非上場会社です。これを「特例中小企業者」といいます。

特例中小企業者の旧代表者(先代経営者)が、その後継者に対して自社株式等を
生前贈与した場合には、遺留分権利者である推定相続人全員の合意により、書面
をもって次の事項を定めることができます。
①後継者が旧代表者からの生前贈与等により取得した自社株式等について、
遺留分を算定するための財産の価額に算入しないこと(除外特例)
②後継者が旧代表者からの生前贈与等により取得した株式等について、遺留分を
算定するための財産の価額に算入する価額を上の合意の時点における価額と
すること(固定特例)

また、上記の除外特例または固定特例の合意がなされた場合には、併せて次の
事項も定めることができます。
③後継者が旧代表者からの生前贈与等により取得した株式等以外の財産について、
遺留分を算定するための財産の価額に算入しないこと
④後継者以外の推定相続人が旧代表者からの生前贈与等により取得した財産に
ついて、遺留分を算定するための財産の価額に算入しないこと

以上の合意は、経済産業大臣の確認を得た上で、家庭裁判所の許可を受けること
によって効力を生じます。
これらの手続は、いずれも後継者が単独で行うことができるため、他の相続人に
遺留分を放棄してもらう場合と比べて、他の相続人の手続的な負担がないという
点がポイントとなります。



伊藤 亮太

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