行政書士講座の講師ブログ

判例紹介:小田急の高架に関する行政訴訟

皆さん、こんにちは!
フォーサイト専任講師・行政書士の福澤繁樹です。

今回は、判例紹介をしたいと思います。
題材とするのは、小田急の高架化に伴う訴訟です。

この事案の概要は、おおよそ以下のとおりです。

平成6年(1994年)5月に当時の建設大臣は、東京都に対して、小田急小田原線の喜多見駅付近から梅ヶ丘駅付近までの連続立体交差化を内容とする都市計画事業、及び当該区間の街路設置の都市計画事業の認可をしました。
これに対して、住環境を守るという趣旨で、鉄道の高架化ではなく地下に通すべきだと考えている当該事業地の付近住民が、当該事業計画について取消しを求めたというものです。

この事案については、まず(1)周辺住民に原告適格が認められるかという問題と、(2)事業地の周辺住民に原告適格が認められるとして、建設大臣の事業計画の認可をうけて、都知事(被上告参加人)が行った鉄道の構造として高架式の採用が裁量権の逸脱・濫用したものとして違法ではないかという問題の2つが論点としてあります。

まず、(1)周辺住民に原告適格が認められるかという問題についてですが、最高裁は、これまでの判例を変更して、事業地の周辺住民にも原告適格が認めうるとしました(最大判平17.12.7)。
すなわち、都市計画法に基づく都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち当該事業が実施されることにより騒音、振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は、都市計画法上当該事業の認可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有するとしたのです。
その上で、事業地の周辺地域に居住する者のうち、本件鉄道事業(喜多見駅付近から梅ヶ丘駅付近までの区間の連続立体交差化を内容とする都市計画事業)につき東京都環境影響評価条例に基づいて定められた「関係地域」内に居住している者は同事業の認可の取消しを求める原告適格を有すると判断しました。

次に、(2)事業地の周辺住民原告適格が認められるとして、建設大臣の事業計画の認可をうけて、都知事(被上告参加人)が行った鉄道の構造として高架式の採用が裁量権の逸脱・濫用したものとして違法ではないかについて、最高裁は、前記の大法廷判決とは別に、最高裁判所第一小法廷にて、この点を判示しています。
すなわち、 都知事(被上告参加人)が行った都市高速鉄道に係る都市計画の変更が鉄道の構造として高架式を採用した点において裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないとしています(最判平18.11.2)

以上、見てきたとおり、この小田急訴訟については、先の大法廷判決が有名であり、従来の判例を変更してまで周辺住民に原告適格を与えて、本案審理にまで辿り着いたという点で、画期的な判例と言われることがありますが、しかし、よく見てみると、2段目というか本丸の本案審理では、建設大臣や東京都の違法性は認められずに、住民側敗訴という結論の事案となります。

あまり行政書士試験には関係はないですが、判例の学習の一助として書いておきます。

今回は、このへんで。