ITパスポート講座の講師ブログ

データの適切性-就職内定率その1-

皆さん、こんにちは。

企業では様々なデータを使って意思決定を行っており、
ITパスポート試験では、そのデータに関して様々な事柄が問われます。
特に「そのデータが具体的に何を含むのか」を明確にしておかなければ、
様々な意思決定には使えないということが前提となります。

しかし、ちまたにあふれているデータにもとづく話はこの基本的な要件を満たさないまま、
覇者の都合のいい形で使われることが多いんですね。
今回は、この辺の例についてお話ししましょう。

データの具体例が想定されないまま使われる例として代表的なものは
「大学生の就職内定率」(厚生労働省)でしょう。
平成27年3月卒の大学生の就職内定率は97%でした。
皆さんはこの数値を見てどう感じますか? 

多くの方は「卒業した学生の97%が就職できたのか。
ほとんど就職できているからいいことだね。」と思うでしょう。
でも、よくみると全くそうではないことが分かります。
では、このデータについて詳しく見てみましょう。

まず、就職内定率を計算する式を確認しましょう。
就職内定率は「内定者数÷就職希望者数」で求められます。
よって、就職を希望しない人は計算から外されます。

大学院進学・留学希望者や、自営業(親の事業を継ぐ人?、起業する人?)、
家事手伝いは外されるそうです。この扱いは妥当な気がします。

特に理系の場合、大学院修士卒が当たり前の領域が多いですから、
大学院進学者を除いて計算しないと、意味の数値を計算できません
(もっとも、進学希望者と家事手伝いの割合は公表されていませんから、
ちょっと怪しい気がしないではありませんが)。

ちなみにこれらの卒業者を含む就職割合(=内定者数÷卒業者数)は70%ですから、
大卒者の約3割は「就職内定率」の計算に含まれていないということになりますね。
 
ではどこに注意しなければならないのでしょう?
それは、調査対象の選定方法です。
この調査の対象は国立大学21校、公立大学3校、私立大学38校です。
調査校は公表されていません。

う~~ん? 学歴社会の日本では国公立大学の卒業生の
就職パフォーマンスが高いことが想像されます。
しかも、全国に約100校ある国公立大学のうち
24校だけが調査対象となっているにすぎませんから、
意図的に都市部にある国公立大学のみが抽出されている可能性も否定できません。

私立大学の選定についても同様のことがいえます。
全国に約700校ある私立大学の中から38校だけしか選定されていません。
しかも私立大学の場合、学生の学力水準はかなりばらついています。
どの層の大学が調査対象になっているかによって結果は全く異なってきますよね。

もう1点注意すべき点があります。それは次回みることにしましょう。