ITパスポート講座の講師ブログ

データの適切性-就職内定率その2-

皆さん、こんにちは。

就職内定率を見る際には調査対象となっている大学が
全体のほんの一部にすぎない点に注意しなければなりませんでした。
また、調査対象となっている大学の全ての卒業生が
調査対象にはなっていない点も注意すべきです。

大学、短大、高専をあわせると1学年に約60万人が在籍していますが、
調査対象はそのうちの5,690人です。
調査対象は全体の約1%にすぎないわけです。
このうち大学生の調査対象は5,000人程度でしょう
(大学生、短大生、高専生の内訳は未公表)。

そう、この調査の対象は62大学で、
そこに在籍する約5,000人にすぎないわけです。
ほんの一部の大学に在籍するほんの一部の学生だけが調査対象となっていて、
その学生の抽出基準は各大学に委ねられています。
無作為に抽出していれば問題は少なくなるでしょうが、
就職できそうな学生のみをピックアップするという操作も可能です。

誤差3%以内の確率の制度を持つ調査をしたければ
母集団の1%程度の調査を行えばよいといわれることもありますが、
その前提は調査対象が母集団の分布を反映していることです。

この調査に当てはめるてみましょう。
学力と就職パフォーマンスに正の相関があり、
各大学ごとの調査対象人数が等しいことを前提とすると、
国公立大学の学生は学力水準が平均以上ですから、
抽出された私立大学の学生の学力水準平均より低めである必要があります。

極論すれば国公立大学の偏差値は50以上であることは一般的だから、
ここで抽出された私立大学は偏差値50以下の
大学だけでなければならないということです。
そうすれば、調査対象者の学力分布が日本全体を表している可能性がとても高くなります。

しかし、そのあたりの情報は公表されていませんから、
就職内定率として公表される数字が有効な数字なのかどうか判断できません。
その一方で、この数字が一人歩きして、
景気がよくなっている証拠の一つとして使われます。

正しい数字なのかどうか、とても怪しい数字なのに・・・。