ITパスポート講座の講師ブログ

実は、すごい戦略家?

実は、すごい戦略家?

皆さん、こんにちは!
ITパスポート講座担当の小野です。
今日もがんばっていきましょう!

ITパスポート試験では経営戦略という用語について出題されます。
様々なレベルでの戦略がありますが、国レベルの経営戦略もあるでしょう。
現在、様々なところで問題を生じさせている貿易問題。
その主犯(?)であるトランプさんのやり方は一見めちゃくちゃなやり方に見えるのですが、
実はもしかするとすごい戦略家かもしれません。

少し前、アメリカは中国・EUから輸入されるモノに対して25%の関税をかけて、
中国・EUにケンカを売りました。中国との貿易に関税をかけるのは腑に落ちるのですが、
EUとわざわざケンカをするのはなぜだろう?と思っていました。
後になってみると、EUに売ったケンカはアメリカ自身のためというより、
「特別な関係」にあるイギリスを救うのが真の目的だったのではないかと思うんです。

イギリス・アメリカは歴史的に深いつながりがあり、
宗教で重なり、共通の言語・法体系を持っていますし、
先祖が血縁関係にあるなど、互いの結びつきが深いですよね。

アメリカはTPPから離脱して、世界中の国と2国間貿易協定を結びたいと思っています。
アメリカはジャイアン的存在なので、2国間協定を結べば、
自分たちに都合のよい条件で貿易できるからです。

イギリスはEUから離脱します。移民問題などで妥協できないからです。
ただ、経済的にはEUに居続けて、EU諸国と関税なしの自由貿易をしたいというのが本音です。
でも、それはEUが許してくれないから、EUとの貿易には関税がかかるようになります。
イギリスにとってみれば、移民問題は妥協したくないけど、
経済問題は無視できず、困ったなぁという状況だと思います。

そこにEUへの関税をかけるトランプさんが登場しました。

アメリカはEUから輸入される自動車に最大25%の関税をかけると発表しました。
今の10倍です。これで最も困るのは誰でしょう? 
EUの盟主、ドイツです。ドイツはは自動車王国であり、
ドイツ車の最大の輸出先はイギリス、第2位はアメリカです。
自動車輸出の1/3位をこの2カ国で占めます。

つまり、ドイツはアメリカ・イギリスとけんかをすると、
ドイツからの自動車の輸出が大きなダメージを受けるんですね。
関税分の一部分だけでも値上げされれば販売台数は減少するだろうし、
現地での販売価格を維持しようとすれば、
ドイツの自動車メーカーが猛烈な関税を払うことになってしまいます。
第1位、第2位の輸出相手が関税のかかる相手になると…、困ったなぁ、
というのが、ドイツの状況です。

その時、ドイツの自動車業界はどう動くでしょう?

1つはドイツ首相としてのメルケルさんに、アメリカと手打ちして、
アメリカへの自動車輸出で関税がかからない(低くなる)ようにして欲しいという要求を出すでしょう。

そして、もう1つは、EUの中心国のリーダーとしてのメルケルさんに、
EUがイギリスと自由貿易できる(貿易環境を維持できる)
ようにして欲しいという要求を出すでしょう。

これを受けてか、7月下旬、メルケル首相はEUが
アメリカからの輸入車に課す関税の引き下げに前向きな姿勢を示し、
アメリカとEUは手打ちしました。

そして、トランプさんとメイさんは米英首脳会談を行い、
アメリカとイギリスが2国間通商協定(FTA)の締結を目指すことで一致しました。

つまり、アメリカは2国間協定を結べて(各国に示すひな形ができて)、
今後の各国との交渉に弾みをつけることができ、
イギリスは米英間に貿易協定があると、
アメリカと同じ条件で貿易するよう、EUとの離脱協議を進めやすくなります。

このようにアメリカは、イギリスとの「特別な関係」を背景にEUにケンカを売ることで、
EUの関税を撤廃させるだけでなく、イギリスにも貸しを作ることに成功しています。
恐るべしトランプさんです。