ITパスポート講座の講師ブログ

日銀は大株主? 日銀は株を買ってどうする?

日銀は大株主? 日銀は株を買ってどうする?

皆さん、こんにちは!
ITパスポート講座担当の小野です。
エアコンで体調が崩れやすくなる時期ですが、
うまいこと調整しましょうね。 

ITパスポート試験では株主総会が企業の最高意思決定機関であると学びます。
株主といえば企業へ出資している人ですが、
多くの企業で日銀が大株主になっているのをご存知でしょうか? 
日銀といえば、お金の発行元というイメージが強く、
株を買っているイメージはなく、結構、意外ですよね?

例えば、ユニクロで有名なファーストリテイリング、ファミリーマートなどなど、
私たちの身近にある企業の株式をたくさん持っています。
では、なぜ日銀が株式を買っているかというと、
景気拡大・物価上昇のためなんです。

日銀は通貨の発行と物価の安定を目的に活動しています(日銀法1条・2条)。
物価は経済の鏡とも言われ、2%くらいの上昇率が続く状態が、
経済の調子がいい=景気がよい状態とされていて、
日銀はその水準での安定を目指していろんな政策を行っているんです。

経済活動が活発になり、あらゆる商品・サービスの需要が高まれば、
多少値上げしても売れるようになりますよね。
多少物価が上がっている状態が健全な経済ということなんですね。
だから、今は1%にも満たない物価上昇ですが、
日銀は様々な手段を使って上げようとがんばっているんです。

これまでは、国債を買って対応してきました。
次のようにイメージしてください。

日銀が国債を買うと、日銀によって新たに印刷されたお金が政府にわたり、
政府がそのお金を使うことで、世の中の様々な人々にお金が行き渡ります。
世の中の人がそのお金を使ってレストランで食事をする機会が増えると、
食材の仕入が増え…、という連鎖がおきて、
経済全体の商品・サービスの需要増につながり、物価が上がるとされてきました。

ただ、ここ数年、このメカニズムがあまりうまく働かなくなりました。
そこで、株式を買うことで世の中にお金を供給するという手段を追加したんです。

私が持っている株式を、このブログをお読みのあなたが買っても、
私とあなたの間で株とお金が交換されるだけで、世の中に出回っているお金は増えません。
でも、私が持っている株式を日銀に売ったらどうなるでしょう? 

私の手元には日銀が新たに印刷したお金が回ってきて、世の中のお金の総額は増えます。

このように、日銀が株を買うのは、多くの人にお金を使わせようとするための方策の1つなんです。
さらに日銀が株を買ったら株価も上がり、物価上昇=商品・サービスの需要増によい影響を与えます。
自分が所有する資産(株)の価格が上がったらお金持ちになった気分になり、
消費を増やす効果があって“資産効果”っていうんです。実際に売らなくても、
時価が上がっただけで儲かった気分になり、儲かっているからおいしいものでも食べようか、
という気になります。

すると、おいしいものを提供しているレストランは売上が増え、
仕入先への発注量も増え…、という形で、
先ほどと同じく世の中全体の需要を増やすんです。

ただ、日銀が買いすぎて株価が上がりすぎている点がちょっと心配です。
これまでに25兆円分を購入済みで、これは全株式の4%に過ぎませんが、
景気が正常になって日銀がその株を売り始めると恐いんですね。

また、日銀が株を買った結果、いろんな企業の大株主になってしまったら、
株を買われた企業としては恐いのでは? 

株主が日銀だったら、日銀総裁や総理大臣に無理難題押しつけられそう、
なんて心配もしてしまいますが、その点は大丈夫です。

日銀がどこかの企業の株を直接買っているのではなく、
投資信託にお金を出す形で買っているからです。

投資信託とは株を共同購入する仕組みで、証券会社が投資信託を作って常にお金を集めています。
その中に、「皆さんから集めたお金で東証1部に上場している企業の株を少しずつ買います」
という投資信託があり、日銀はそこにお金を出しています。

ですから、企業の株を直接買っているのは証券会社であり、
日銀ではないんですね。
そのため、日銀がどこかの企業の株主総会に出席して、
その企業を乗っ取るなんてことはありません。

こんなことまでやって日銀はがんばっているんですね。