ITパスポート講座の講師ブログ

Amazonと公正取引委員会が…

ITと物流

皆さん、こんにちは!
 ITパスポート講座担当の小野です。
 連休はどれくらい休めるだろうか?? 逆に憂鬱だったりして。

 先日、公正取引委員会が、ネット通販大手のAmazonに対し、実態調査を始めると発表しました。ITパスポート試験の範囲である不正競争防止法と関係ありそうなニュースですが、公正取引委員会の狙いはどこにあるのでしょう? 

 そもそも公正取引委員会には 大きく2つの役割があります。
 1つは、独占・寡占企業が生まれないように、複数の会社が競争している環境を維持することです。
 長崎の地方銀行が合併しようとしたときに、地域の銀行が1つになると貸出金利が上がり、地域の企業が高い金利でしかお金を借りられなくなるという理由で、合併に多くの条件を付けたのは記憶に新しいところですね。企業が競争しないとサービス水準などが下がってしまうから、競争環境を維持するのが1つめの仕事だということです。

 もう1つは、発注側(力を持っている大企業)が、受注側(言うことを聞かざるを得ない下請中小企業)に無理難題を押し付けない環境を作ることです。
 以前は「かなり無理しないと不可能な納期を設定する」「代金の支払時期を先延ばしする」といったことが横行していましたが、下請代金支払遅延防止法(おっ! これもITパスポートの出題項目ですね!)を作って対応してきました。消費税が5%から8%に上がったときも、大企業は中小企業から部品などを仕入れるときに税率アップ分を値引きするように迫ることもあって、そんなことが起こらないよう、“転嫁Gメン”を組織して監視していました。このように、立場の弱い取引先を守るのが2つめの仕事です。

 Amazonへの調査は、表面的には、立場の弱い取引先を守るという2つ目の役割を果たすということでしょう。Amazonのビジネスは、ネット上にショッピングモールを作り、多くの企業が出品する場を提供し、場所代を徴収するというビジネスです。そして、このモールはとても人気があり、1日で多くのお客さんが来店します(プライムデーには、全世界で、1日2,000億円くらいの売上があるとか!)。
 それだけの集客力があると、出品する下請企業に対して無理難題を押し付けることが可能になります。2018年には、Amazonモールの価格を再安値にするために、出品者に無断で販売価格を値引きして、その値引き分を出品者に負担させていたり、2019年にはすべての商品にAmazonポイントを付与し、その原資を出品者に負担させると発表したり、ちょっと無理難題なことが続いていますね。

 そこで、公正取引委員会がAmazonへ調査へ入ったということです。
 ただ、それは建前で、本音はもっと大きなところにあると思います。本音はどこかというと、GAFA、楽天、ソフトバンクといったプラットフォーマー全体へのけん制+実力行使だと思うんです。
 IT企業はサービスを無料・低価格で提供する代わりに私たちの個人情報を細かく収集しています。そして、収集したデータに基づいてAmazonオリジナルの商品を作ったりします(amazon basicsという呼び名で販売されていたりと)。すると、Amazonモールの中で最も売れる商品が出来上がってしまい、それを独占販売する企業になってしまいかねません。

 言い換えると、出品者は、現在のお客さんに対してAmazonの利便性を高めるコストを負担するだけでなく、amazon basicsなどとして売り出されるであろう売れ筋商品の両方をAmazonに差し出している状態になっているともいえます。
 だから、「公正な取引ではないどころか、経済全体を支配されかねない状態であり、調査して必要な対処をしますよ」ということなんでしょう。

 プラットフォーマーの出現で、私たち消費者は化なりの利便性を得ることができました。一方で、少し行きすぎの面も見られるようになってきたのも事実です。うまいところに着地して、消費者・出品者・プラットフォーマーが共存できる環境になって欲しいですね。