ITパスポート講座の講師ブログ

行動のきっかけを与えるナッジ

皆さん、こんにちは!
ITパスポート講座担当の小野です。

春にはなりましたが、心は…。
何とか、この難局を乗り切っていきたいものですね!

私たちの日々の行動。ちゃんと考えて、無駄のないように、
気を付けて行動していると思っていますが

実は、狙いどおりに私たちを行動させる仕掛けが、
いろんなところに仕掛けられているんです。

ITパスポート試験でもマーケティング戦略などの
いろんな知識が問われますが、社会全体にかなり浸透しているんです。

その名はナッジ(nudge)。
科学的な分析をもとにした情報(きっかけ)を与えて、大きな流れを作り出す道具です。

もともと「(注意や合図のために)そっと突く」という意味の言葉で、
最初は企業がより多く稼ぐためにお客さんに働きかけるという使い方でした。

しかし、最近は、社会をよくするために
人々に働きかけるような使い方も多くなってきた。

例えば「デフォルト」っていう使い方がありますが、
オススメ(選んでほしい選択肢)を最初から提示しておく手法です。

(私もめんどくさがりなんですが)
人って、自分からわざわざ行動したくない生き物ですから。

例えば、ネット通販での配達方法オプションで、
通常配達(無料)とお急ぎ配達(有料)があって、
画面上、最初はお急ぎ配達が選択されているようなケースです。

一方、社会的な使い方としては、臓器提供意思表示のケースで使われています。
ドイツでは、免許証などの裏に「臓器提供したい場合は〇をつけて」としました。
〇をつけた人はどのくらいいたと思いますか?

残念ながら、10%の人しか〇をつけませんでした…。
つまり、臓器提供に同意した人は10%。個人としては
ちょっと大変なことですから、躊躇してしまったのでしょうか。
政府としてはあまりいい結果ではありません。

一方、フランスは「臓器提供したくない人は〇をつけて」とした。
結果はどうなったと思いますか?

〇をつけた人は10%。つまり、90%の人が提供に同意した。
「したくない場合に〇をつける」という質問にするだけで、
多くの国民を臓器提供に同意させることに成功したわけです。

他にも「フィードバック」という使い方があります。

誰も払いたくない税金ですが、
イギリスの税務署はどうやって払ってもらうか考えました!
通知書に同じ地域に住む人々の納税率を書いて送ったんです。

通知書を受け取った人は「やべぇ。
みんなちゃんと払ってるじゃん。」って感じたのか、
納税率が68%から83%へ大幅アップ(300億円相当)しました。
通知書への印字を1行追加するだけで、300億円集めちゃえたというわけです。

ナッジの最大のポイントは、
罰金・税金・報償といった経済的なデメリットを提示せずに、
人々の行動を変えることです。臓器提供意思の例では、
賛成しても何かをもらえることはありませんが、反対しても
罰則が適用されるわけでもありません。完全に、各個人の意思です。
傷つく人が少ないやり方だから、受け入れられるのかもしれません。

さて、このナッジ。日本でも使われ始めました。
つい最近の例だと、経済産業省のレジ袋実験です。

レジ袋を辞退させるためにどうすればいいか?
レジの前にカードを置いておき、

A社:「レジ袋いらない人がカード提示」方式
B社:「レジ袋欲しい人がカード提示」方式

ここでは、ドイツ・フランスの例のような違いは出ませんでした。
そこで一工夫しました。

レジ袋を欲しい人が提示するカードに海岸に
漂着したゴミの写真を印刷したんです。

すると、「レジ袋欲しいカードを出す」人は
激減し、70%の人が辞退しました。

そんな写真を見せられると
「レジ袋使わないようにしなきゃ」って思うようになって、
それが行動に、つながったと考えられます(ある意味、嫌がらせではあるんだけど…)。

経済学は「人は経済的な面で合理的に行動する」という前提で
研究されてきたけど、実は、人は「経済的には合理的でなくても、
満足するのであれば行動する」ということが分かってきました。

社会で求められていることを、人々がそれほど負担を感じることなく、
自然にできるようになるために、経済学が役に立っているのです!

人々の行動をそっと誘導するナッジ。
コロナウィルス対応でも、人々に何かいい働きかけができればいいんですが…。