ITパスポート講座の講師ブログ

ビッグデータの収集と販売-その2

皆さん、こんにちは。
 
前回は自動車メーカーのナビが「基本利用料金無料」にすることで
多くの情報を集めることが可能になることをお話ししました。

ナビの利用者が払う料金は無料ですが、
個人の行動がデータとして企業に蓄積される=個人の情報を無料で企業に提供していることにもなります。

同じ仕組みはポイントカードでも構築されています。
私たちは日常的にポイントカードを使っています。
買い物すればポイントがもらえて、一定のポイントで一定額の商品をもらえるサービスです。

私たちは無意識にポイントを集めようとできる限り同じお店で買い物しようとします。
そして買い物の時にポイントをもらう代わりに、「何月何日の何時何分に、どこの店で、どんな商品を購入した」
という情報を企業に提供(販売)することになります。

企業は会員情報としてすでに年齢、性別等の基礎データを持っており、
買い物時点の気象データを同時に取得することにより、
「何月何日の何時何分、15℃で晴れで湿度50%のとき、何歳の男(女)性が、どの店で何かを買った」
ということがわかります。

ポイントカードの会員が増えれば増えるほど、
会員の買い物データがたくさん手に入ります。
統計学を使えば、天気と性別と売れ筋商品の関係なんてものもある程度わかりますから、
ポイントカードの会員が増えて集まるデータ増えるほど、どの商品が売れそうか、
高い精度で予想することが可能になるわけです。

こうやって企業は“利用無料”や“ポイント進呈”
という仕組みで個人情報を集めている、というか個人情報を買っています。

これまでは集めた情報を自社で使うだけでしたが、
コンピュータと統計学の発達により、一定量のデータが集まり、
それを分析すれば、消費者の傾向をある程度明らかにできるようになってきたことから、
集めたデータを販売しようとする企業が出始めました。

個人が特定できるような情報は1つ1つのデータから消してから販売するのでしょうが、
我々の手の届かないところで、データ化された私たちの行動が売買される時代となりました。

最近でいうと、鉄道会社がIC乗車券から得られる乗降データを販売しようとしました
(あらゆるところから批判されてしまい、今のところ販売時期は未定となっています)。

ナビやポイントカードの場合、
利用者は対価(無料利用やポイント)をもらって個人情報を企業に渡しています。
ですから、企業に売った個人情報がどのように使われるかを批判することはできないと思います。

気にくわないなら個人情報を売らなければいい
(無料利用をしない、ポイントをもらわない)だけの話です。
ここで重要なことは、個人情報の対価が企業から個人へ支払われていることです。

一方で、乗客はIC乗車券での乗降データを鉄道会社へ提供する対価を何ら受け取っていません。
IC乗車券を使ったら切符を買うときより運賃を安くするとか、ポイントを付けるといったことができればいいのでしょうが、
公共交通機関の運賃は認可制なので、ポイントを付けたりするのはおそらく無理でしょう。

しかし、IC乗車券を使って乗車すれば、
乗降データは否応なく鉄道会社に提供しなければなりません。
そして、それが外部に販売されるということになれば、
鉄道会社は無料で手に入れた情報を使って稼ぐことができるようになります。

そうなると、鉄道会社が集めたデータを売買するのはフェアじゃない気がしてしまいます。
何とか、巨大資本に対抗する手段がないものでしょうかね。