ITパスポート講座の講師ブログ

目的と手段 -タクシー運転手さんの待遇改善-

皆さん、こんにちは。

ITパスポート試験では、コンピュータシステムの開発について、
目的と手段という関係を重視すると学習します。
ある目的があって、その目的を達成できるようなシステムを作るわけです。
とても当たり前の話です。でも現実社会ではなかなかこの原則を考慮するのが難しいようです。

小泉改革でタクシーの台数が自由化されました。
その結果、タクシーの台数が増えすぎてしまい、運転手さんの取り分が減ってしまい、
長時間の過酷な労働がなされているという問題を生じさせました。

そこで、安部政権はタクシーの台数を制限する規制を復活させることにしました。
台数が減ればお客さんの取り合いが減るので、運転手さん1人当たりの取り分が増えるという理屈です。
目的は運転手さんの待遇改善です。

台数を減らせば運転手さん1人当たりの取り分は増えるでしょう。
でも、台数が減った分だけ運転手さんの人数も少なくてすみますから、
リストラされる運転手さんが出るでしょう。

そうすると、運転手さん全体の取り分は増えないかもしれません。
リストラされた運転手さんの取り分がリストラされなかった運転手さんに回されるだけです。
要するに、台数を規制するという手段をとっても、
タクシー業界全体としては「運転手さんの待遇を改善する」という目的を達成できなさそうなわけです。

この目的を達成するためにはお客さんそのものを増やす必要がありますが、
お客さんをどうやって増やすかという話が出てこないんです。

通常、需要(お客)が減れば、価格を下げたり、価格据え置きでサービスを付け加えたりして、
需要(お客)を増やす工夫をします。でも、タクシー業界はそれが禁じられているのです。
価格は事前に決めておかなければならないし、ビールやおつまみを出したタクシーが批判されたこともありましたよね。

今までタクシーに乗らなかった人にタクシーに乗ってもらうためには、
お客さんにとってのタクシーの価値を上げなければなりません。
タクシー代が安くなったり、新しいサービスが導入されればお客さんにとってタクシーの価値が上がるでしょう。

「バスで帰るのも疲れるし、そういえば最近タクシー代が安くなったからタクシーで帰るか」、
あるいは「はやくビール飲みたいな。そういえばビールを飲めるタクシーもあるな。じゃ、タクシーで帰るか」となるわけです。

決して、「最近はタクシーの台数が減ったな。じゃ、タクシーで帰るか」とはなりません。
どうやったら、「タクシーで帰るか」と思う人を増やせるのでしょうね?