社会保険労務士講座の講師ブログ

年次有給休暇の規定の「労働日」

みなさん、こんにちは。
フォーサイト専任講師の加藤です。

明日からの3連休、どのように過ごす予定でしょうか?

さて、今回は、労働基準法の年次有給休暇についてです。
年次有給休暇権発生の第2要件として、
前6か月(1年)の「全労働日の8割以上出勤した」というのがあります。
ここでいう「全労働日」、
労働基準法を勉強しているのであれば、ご存じのように、
「労働契約上労働義務の課せられている日」をいい、具体的には労働協約、
就業規則等で労働日として定められた日のことで、一般には6か月(1年)の
総暦日数から所定の休日を除いた日がこれに該当します。
そこで、この「労働日」とみるべきか否か、また出勤とみるべきか否かが問題
となるものがあります。
労働基準法では、
① 業務上傷病にかかり療養のため休業した期間
② 育児介護休業法に規定する育児休業又は介護休業をした期間
③ 産前産後の休業期間
について、これを出勤したものとしていますが、これ以外については何ら規定
していません。
そのため、年次有給休暇を取得した日、争議行為期間中の日、使用者の責に帰す
べき事由によって休業した日、不可抗力によって休業した日等をどう取り扱うか
が問題となります。
これらのうち、年次有給休暇を取得した日については、労働基準法が権利として
保障した休暇であり、その権利発生の要件としての出勤率算定に当たってこれを
欠勤として取り扱うことは当を得ないので、出勤したものとして取り扱うことと
しています。
年次有給休暇以外の日は、いずれも現実には就労しておらず、法律上も出勤として
取り扱う規定が置かれていないので、8割出勤の算定に当たって出勤とする必要は
ないわけですが、8割出勤を条件としているのは、労働者の勤怠の状況を勘案して、
特に出勤率の低い者を除外する立法趣旨であると考えられるので、正当な手続に
より労働者が労働義務を免除されているときの不就業という事実は、必ずしも
勤務成績不良という評価を受ける性質のものではなく、欠勤と同様に取り扱う
ことは妥当ではないので、全労働日から除外するようにしています。

一方、「裁判所の判決により解雇が無効となったような場合の解雇日から復職日
までの不就労日」については、これらとは扱いを異にしています。
労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができ
なかった日は、労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえない不就労日で
あり、このような日は使用者の責めに帰すべき事由による不就労日です。
とはいえ、このような日を欠勤と同様に取り扱ったり、労働日から除いたりする
と不当・不公平な結果になってしまうことが考えられることなど当事者間の衡平
等の観点から、「出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべき
もの」とはいえないから、出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきもの
として全労働日に含まれるものとされています。

「労働日」に含むのか、含まないのか、含む場合、出勤とされるのか、欠勤と
されるのか、この点は、論点にされることがあるので、判断できるようにして
おきましょう。

今回は、これまでです。