公務員試験対策講座の講師ブログ

公務員試験上級と初級の難度の違いとは

☆はじめに☆

一般的に「上級や大卒程度の方が難しそう」という印象をもたれるのではないでしょうか?

その想像は当たっています。では、難しくするというのがどういうことなのか、それを具体的に数的処理の問題を通して検証していきます。

あくまで、「難度の違い」に焦点を当てるので、待遇や昇進等の違いは別の機会に譲ることとします。

☆本稿の内容☆

■初級試験の問題例と特徴

■上級試験の問題例と特徴

■まとめ

■初級試験の問題例と特徴

きわめてシンプルな構造になっているのが特徴です。

例えば、次の問題をご覧ください。

問:3個のサイコロを同時に振ったとき,出た目の和が10になる確率はどれか。

(フォーサイト問題集より)

実際は選択肢があるのですが、解説が目的ではないので割愛します。

出典は特別区のⅢ類、いわゆる地方初級に分類されます。

特徴としては次のようになっています。

これらの特徴をひとことで言ってしまうと、「テキストの例題で誰もが間違いなく見たことがある」 と言えます。

■上級試験の問題例と特徴

では、同じ確率の論点で比較してみましょう。

問:

正四面体

のサイコロが2個ある。一方のサイコロには1から4までの異なる数がそれぞれの面に1つ書かれている。もう一方のサイコロには+,-,×,÷の異なる4つの演算記号がそれぞれの面に1つ書かれている。サイコロを振ったときに底面に書かれているものを出目とする。いずれの面の出る確率も等しいものとする。

今、数が書かれたサイコロを一度振り,数を決める。次に、記号が書かれたサイコロを一度振り、演算を決める。さらに、もう一度数が書かれたサイコロを振り、数を決める。

これらの出目を、サイコロを振った順番に並べて式を作り、計算をする。

このとき、

計算結果が整数とならない又は負となる確率

はいくらか。

(フォーサイト問題集より)

出典は裁判所事務官、大卒程度に分類されます。

ぱっと見ただけでも、この問題の方が難しそうですよね。

では、使っている知識が難しいのでしょうか?

この問題の概要は次の通り。

文章量が多いこと以外、つまり確率の知識としては初級と変わりません。

すなわち、「上級」、あるいは「大卒程度」だからと言って、とても難しい数式が出てくるというものではありません。

ただ、この問題では、先ほどの問題とはいくつか異なる点があり、それが問題を難しく感じさせています。各、着色部分をご覧ください。

①黄色の着色箇所 サイコロの問題であれば、まずいわゆる正六面体のサイコロで確率のトレーニングをします。正四面体のサイコロを中心にトレーニングをしたという受験生は、いないはずです。

②水色の着色箇所

演算をするという状況、要はサイコロを3つ振って計算式を作るというシチュエーションです。2回目に振るサイコロには+、-、×、÷が書いてあるということですね。

①と同じく、「公務員試験対策として」サイコロで計算式を作る問題をいくつもやった、という受験生は少ないはずです。

③緑の着色箇所

確率の数え上げなのですが、ただ書き出せばいいというのではなく「整数」に関する視点が必要になります。

簡単に解説をするので、興味のない方はとばしてください。

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この状況で、計算結果が「整数とならない」のは,2つ目のサイコロが割り算のときだけです。足し算や掛け算は必ず整数になります(例えば、1+1=2や2×3=6)。

ですから、2回目のサイコロの目が+や×の場合についてはそもそも検討する必要がありません。

その上で、書き出していきます。

「割り算をして計算結果が整数とならない」サイコロの目の出方は,(4, ÷ ,3) (3, ÷ ,4) (3, ÷ ,2) (2, ÷ ,4) (2, ÷ ,3) (1, ÷ ,4) (1, ÷ ,3) (1, ÷ ,2)の8通りです。

次に「計算結果が負となる」のは,2つめのサイコロが「-」であって、1つ目より3つ目の方が大きい数字が出る場合です。すると(1,-,2)(1,-,3)(1,-,4)(2,-,3)(2,-,4)(3,-,4)の6通りを書きだすことができます。

したがって、確率の基本公式の分子になる数字が8+6=14通りとなり、分母は4×4×4=64とおりであることから、確率としてはであると導けますね。

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つまり、

①状況が特殊になる

②複数の知識を用いる必要が出てくる といった細工をした結果、情報処理の難度が上がります。その結果として上級試験の正答率が下がるという流れです。

ここで必要な整数に関する視点も、整数の論点の基礎問題をやることで自然と身につくものです。

②で、追加で使用する知識も難しいものではなく、あくまで基本的な内容であることが大半です。

■まとめ

大卒程度や上級であっても、難しい数学の公式が出てくるわけではないことから、まずは基礎的な内容を網羅的に整理することをオススメいたします。

その上で、試験種ごとの特徴や長文化した状況での整理の仕方などを学んでいくことで、大卒程度、上級試験に十分に対応できるようになるはずです。

上級・大卒程度の試験では、場合によっては受験生を混乱させるための「不必要な情報」が盛り込まれていることなんかもあります。 文章にストレスを感じないよう、論文や文章理解などのトレーニングも丁寧に積んでおきたいところです。