簿記講座の講師ブログ

会計の役割を再確認しよう

皆さん、こんにちは!
簿記講座担当の小野です。
おいしいものをたくさん食べられる時期で楽しいんだけど、
ちょっとおなかが・・・ボタンが・・・マズイ・・・。

先日、日産のゴーン会長が逮捕されるという、驚きのニュースが流れてきました。
有価証券報告書に受け取った報酬を少なめに記載した容疑です。
簿記・会計に関連する仕事をしている私にとって、このニュースを見たとき、
あらためて会計情報の大切さを考え直さざるを得ませんでした。

企業は多くの人々(株主・銀行など)から活動資金を集め、
そのお金を使って活動しています。
ですから、株主・銀行などへ、提供してもらったお金をどのように使ったのか、
きちんと報告しなければなりません。
有価証券報告書は、企業の活動報告が事細かに記載され、
企業活動を説明するための書類です。
今回の容疑は、その報告書の中でウソをついていたことです。
 
これがどれだけまずいことなのでしょう?
株主・銀行は、ウソをついた企業を信用できなくなります。
皆さんは信用できない相手にお金を提供しますか? 絶対にしませんよね。
ですから、ウソをついた企業からはお金が引き揚げられてしまい、
その企業の活動資金が足りなくなります。
そして、他の企業もウソいているんじゃない?という疑心暗鬼で、
真面目にやっている企業からも資金が引き揚げられたり、新規資金を得られなくなったり、活動資金を心配しなければならなくなる事態を引き起こすんです。
ヘタすると上場廃止になり、企業は資金を得られず潰れ、
株主は株券がパーになるなんてことになりかねません
(すでに何社もそんな事件を起こしてますよね)!

そして、最終的には、私たち一人一人の暮らしにも悪影響を与えます。
私たちが暮らしている資本主義経済という社会は、食べ物・着るもの・住むところ・娯楽など、私たちの暮らしに必要なほとんどすべてを企業が提供している社会です。
私たちの暮らしのほとんどを企業が支えているんです。
1社の悪事で活動資金を集められなくなって倒産し、
さらに、連鎖で真面目にやっている企業が活動できなくなったら
(倒産したら)どうなるでしょう? 
極端な話、私たちは衣・食・住を確保できなくなってしまい、
ヒドイことになってしまいますね。
また、株価が下落すればいろんな人々が影響を受けます。
年金の運用益も減ってしまいますから、私たちの老後の取り分も減ってしまいます!

つまり、その1社の問題ではなく、国全体・1人1人の生活にとても大きな影響を与えるという重大な役割を担っているのが企業だから、企業はきちんと株主・銀行を安心させるために本当のことを報告しなければならないんです。
おおげさではなく、有価証券報告書でウソをつくことは経済を破壊する行為なんです。

こんなに大事なことですから、様々なところでチェックが入ります。
まずは、公認会計士といわれる方々のチェックです。
公認会計士も企業のウソを見逃したら株主から訴えられるから、
ガチでチェックするはずです。
また、すべての企業は税務署に決算書を出すことになるので、
税務署も間接的にチェックすることになります。
それらのチェックでバレなかったのですから、相当うまくやっていたんでしょうね。

このように、今回の事件は、ゴーン氏が報酬をごまかして、払うべき税金もちょろまかしていた(個人が悪さしていた)という小さい話ではありません。
売上12兆円、利益7,000億円の企業が、ウソをついて活動資金を集めた=経済を破壊しかねない行為を行ったというレベルの悪事なんです。
ですから、フランス政府の影響下にあるルノーの社長であるゴーン氏といえども見逃されることなく、特捜部という日本の中でも最強の捜査機関が直接扱う事件になっているんですね。
 
会計が担っている役割の重大さを身に染みて感じた事件でした。