簿記講座の講師ブログ

法人税が下がっている?

 皆さん、こんにちは!
簿記講座担当の小野です。
“食欲の秋”が過ぎていき、次は年末の忘年会!
そこまでにお腹を何とかしとかなきゃ!

 消費税が上がる一方で、下がっているといわれている法人税。
庶民からばっかり税金とるより、がっぽり稼いでいる企業から税金とったらどう?と文句を言いたくなりますが、法人税ってどんな状況になっているのでしょう?

法人税って3つの税金の総称です。
国に払う法人税、県や市に払う法人住民税・法人事業税の3つですね。

1つ目、国に払う法人税は利益の24%くらい。中小企業だと少しだけ優遇あります。
2つ目、県や市に払う法人住民税は、利益の3%(所得割)+7万円(均等割)です。均等割は資本金・従業員数に応じて増えて、資本金2,000万円、従業員10人だと、18万円くらいです。
3つ目、県に払う法人事業税は、利益の2%くらい。

これら3つをまとめると、だいたい利益の30%+資本金の額などに応じた課税になっていて、儲かっている企業は結構払っているのではないかと思われます。

 ではここで1つクイズです。
サラリーマンで30%の税金を払う人って、どれくらいの年収の人だと思いますか?

なんと、独身だったら最低でも年収650万、妻一人子一人だったら最低でも年収830万。
結構、高年収(!)の人の税率なんですね。ということは、法人税は累進課税ではないので、(一部の中小企業向け優遇を除いて)企業の利益に対してはがっぽり課税されていると思うんです。
その上、国際的にもまだ高い水準だから、グローバル化の時代、これ以上上げるわけにもいかないという状況です。

 ただ、ここで1つ注意しなければいけないことがあります。
税金は“利益”の30%だということです。つまり、利益がなければ税金はほぼ払わなくていいっていう点です。
そして、実は、世の中見渡してみると、税金を払っていない企業がけっこうあります。

というのは、がっぽり儲けていても、税金計算の特殊な調整があって、税金計算の上では赤字になることもあるからです。

 例えば、2018年のソフトバンクグループは1兆円の利益を得ましたが、税金計算上は1兆4,000億円の赤字だったので税金は払っていません。
なぜ、そんなことになっているかというと、鳴り物入りで登場した10兆円ファンドに子会社株式を移管するときの時価が下がって損したことになっているからなんです。
グループ内の取引なので子会社株の管理者がソフトバンクから10兆円ファンドに変わっただけで実質的な損はありませんが、税金計算上の損失としてカウントされたんですね。

他にも、バブル崩壊後にメガバンクが10年以上法人税をほとんど払っていないのは有名な話です。税金計算上、過去の累積赤字を今年の黒字から引くことができるからです。
メガバンクはバブル崩壊で100兆円を超える損失を出したと言われていて、その損失がなくなるまでその後の利益から引かれ続けた結果、10年以上赤字、納税額がかなり低くなったというわけです。

 ちなみに、日本の中小企業の6割は帳簿上赤字になっていて、税金を払っていません。
だから、税金を取るほうもいろいろと対策をして、例えば、銀行の問題では外形標準課税で対応したりしました。
(メガバンクのような)大企業は過去の赤字の穴埋めのために税金を払わないのに、たくさん従業員を雇っていて高給を払い、一等地の豪華なオフィスを使っているという批判があったので、「従業員に払った給料と払った家賃の1%くらい」を事業税として納税させることにしました。
赤字でも多少の納税を続けさせる仕組みを作ったんです。

 ここで私たちが注目すべき大切なことは、税率だけに注目していたらダメ、税額にも注目しましょう、ということです。
個人が払う所得税と比較しても、外国の法人税と比較しても、日本の法人税の税率は高い水準にあります。

だから、「儲けている企業から税金を取るためにもっと税率を上げろ!」と批判しても効果はあまりありません。一方、利益の計算方法には、税額を低くするためのいろいろな抜け穴があります。

 私たちも、こういった点に気づけるようになると、選挙の時などにもっと有意義な議論ができるようになるのかもしれませんね。