簿記講座の講師ブログ

簿記・会計が環境保護に貢献できる?!

 皆さん、こんにちは!
簿記講座担当の小野です。
おいしいものをたくさん食べられる時期で楽しいんだけど、ちょっとおなかが・・・ボタンが・・・マズイ・・・。

大雨、巨大な台風など、異常気象が続く地球。それなのに、気温上昇抑制のための取り組みを行っているパリ協定から、先進国最大のCO2排出国であるアメリカが離脱してしまいました。
これで環境を守れるのでしょうか? 何かよい方法がないのでしょうか? 

もしかすると、ESG投資という投資スタイルが地球環境を保護するかもしれません。今、お金の出し手(投資家)の出番なんです!

 ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字です。
環境に優しい企業、社会貢献度の高い企業、不祥事を起こさない企業へ、優先的に投資するという取り組みです。
欧米を中心に、ESG投資が、投資全体の約3割になるまで増えていて、日本でも、日本最大の投資家であるGPIF(厚生年金の積立金を運用している公的組織)が、3兆円くらいをESG投資に回していて、今後も増やす見込みです。

 近年は、さらにESG投資が盛んになってきて、その結果、2019年になってから再生可能エネルギー関連の企業への投資が増え、再生エネルギー関連企業の株価は30%くらい値上がりしています。
例えば、世界63カ国で使われている風力発電機を製造しているデンマークのVESTASや、太陽光発電のコストを火力発電以下に引き下げたといわれているアメリカのFIRST SOLARなどが代表格です。

 一方で、ESG投資家は石油や石炭を扱っている企業から手を引いて、それらの企業の株を売っています。2019年に入って、石油を扱っている企業の株価は10%くらい値下がり、石炭を扱っている企業の株価は20%くらい値下がりしているんです。
こうやって、投資家は、環境に厳しい企業への投資をやめることを通じて、そんな企業に「環境に優しい事業をしなさい!」ってプレッシャーを掛ける投資スタイルをとっているんです。
 
もちろん、投資家にとって、投資先から継続的に配当を受取り、投資先の株価が上がることが必要です。ですから、単に環境に優しい企業というだけではなく、これまでしっかりと経営してきているかを過去の財務諸表で確認する必要があります。
ですから、皆さんが勉強している簿記・会計の知識・技術は、ESG投資を行う投資家の助けとなるんです!

 ちなみに、最近は保険会社もプレッシャーをかけ始めました。
例えば、フランスのアクサやスイスのチューリッヒ(日本でも自動車保険やっていますね!)は2017年頃から石油・石炭関連企業が自社の保険に入るのを拒否していますし、ドイツのアリアンツは2018年頃から石炭発電所の建設、運営、炭鉱経営のための保険を取り扱わなくなりました。
こうやって、保険会社が石油・石炭企業とのおつきあいをやめているからか、世界中で石炭発電所の新設計画中止が相次いでいて、中国・インドでは350件くらいの石炭発電所計画が中止となっています。

 また、環境問題といえば国の取り組みがかかせません。
投資家は国に対しても、環境対応をやってない国の国債は買わない、という投資スタイルで投資家がアクションを起こしています。
国債が売れなくなると、政府は必要な資金を集めるために、国債の利率を上げなければいけなくなります。
残念ながら日本では原発が止まってからCO2排出量が増えていて、欧米の投資家から国債を買ってもらえない状況になりつつあります。
日本政府は欧米の投資家からプレッシャーを掛けられているんですね(国際環境NGOから、化石章なる不名誉な賞も授与されましたし、日本は環境後進国なんですよね…)。

政府も財政状態を明らかにするために企業会計と同じ手法で貸借対照表・行政コスト計算書(企業の損益計算書のような書類)を作成・公表しています。それをみて、投資家は政府への投資(国債の購入)を行います。
つまり、簿記・会計の知識・技術が、投資家による政府への投資を助けているわけです。

買い物袋を持参するとか、暖房の温度を少し低めにするなど、環境に対して個人ができる直接な取り組みもありますが、簿記・会計の知識をしっかり身につければ、環境を破壊する企業に活動資金が渡らないようにする(環境を破壊する企業への投資が行われてないようにする)というかたちでの貢献もできます。

 簿記・会計のこういった側面も知っておきたいですね。