簿記講座の講師ブログ

今こそ学ぼう -世界の価格安定化装置-

 皆さん、こんにちは!
簿記講座講座担当の小野です。
徐々に動き始めた世の中。仕事・勉強モードに戻れるといいですね! でも慎重に!

 新しい生活様式を求められる現在。乗り切るだけでも大変ですが、こんな時に時代が変化することもまた事実です。だから、ほんの少しだけでも、世の中の仕組み・成り立ちをちょっと覗いてみたらどうでしょう? 普段は私たちの目に触れないけど、経済の中で重要なことがきっとあるはずです。

 今日は世界のモノの値段を安定させているツールについて考えたいと思います。
その名も「先物」! 先物というと、何だか投機の極みみたいなイメージですが、実は、世界中で取引されているモノの価格を安定させる装置の役割も持っているんです。

 実は、先物生まれは日本。江戸時代の大坂堂島米会所(こめかいじょ)と言われる市場なんです。仲買人が農家から米を集めてきて、それを小売店などに競りで売る市場が始まりました。最初は、競りが成立したら、その場でコメとお金を交換してたわけです。それだったら普通の市場ですよね。こういう取引をしている市場を現物市場といいます。
でも、市場の規模が大きくなってくると、取引が大規模になってきます。コメ1トンとか取引したら、市場にコメを持ち込むのも難しいし、市場で受け取るのも難しいよねって状況になります…。

 じゃぁ、どうする? そこで、市場でコメを買った側は、その証拠としてコメを1トン受け取ることができる権利書を受け取って、その権利書を持って直接農家に取りに行くことにしたんです。つまり、市場では、権利書という紙をやり取りするだけにしたわけです。

すると、市場での取引は楽になりますね。そして、こういう工夫をすると派生的にいろんな工夫が生まれ、権利書のバリエーションが多彩になっていきました。
 例えば、今すぐコメはいらないんだけど、1か月後に1トン欲しいという人が出てきたり、逆に、今売るコメはないんだけど、1か月後に収穫できるので、1か月後に1トン売りたい農家が出てきたり。
こんな人たちを取引に参加させるために「1か月後に農家に行ってコメをもらえる権利書」なんてものが出てきて、売買されるようになりました。これが先物取引です!
取引に参加する人が多いほうが、取引が成立しやすいので、市場はできる限り多くの人々を取引に参加させようとする工夫をするわけですね! 

 こんな取引が可能になれば、

・農家は1か月後に売るコメの値段を確定できる
・買う側は1か月後の仕入値を決めることができる

ようになり、自分の商売の計画を立てやすくなります。先物は、こうやって、安定した値段で商売を行えるようにしてくれるツールなんですね!

現代はそれがコメ以外に広がった世界です。原油、金、銀、大豆、コーン、ゴムなどなど、いろいろな製品の原料となるようなモノの値段が、数か月後分まで取引されています。
ガソリンメーカーは原油輸入の際に先物も利用して、仕入値を安定させています。ガソリンメーカーの努力も大きいですが、3月上旬くらいに1週間で、原油価格が半額になっても、店頭のガソリン価格は1割くらいしか変わっていませんよね。大豆先物も役立ち、豆腐の値段も安定していますし、先物のおかげで、私たちの生活の中で、モノの急激な値段の変化が避けられるわけです。

だから、先物は価格安定装置といえるわけです。
そして、将来の変化を見越して、先物自体も値上がりしたり、値下がりしたりする。
 言い換えると、先物自体の値動きを見れば、市場で取引している人たちの「将来はどうなりそうか」という予想を見ることができます。
 例えば、原油先物が値上がりしていれば、将来、原油を必要とする何かが起こり始めているということですね。
 今の原油価格は22~25ドルくらい。2か月後の原油は26~28ドルくらい。だから、「2か月後くらいからコロナ騒動から解放されて経済が動き出し、原油を使い始める」と、世界の人々は予想しているんでしょう。

 そんな見通しを私自身の生活にも取り入れたいですね。
何が起こるかわからない世界。でも多くの人々がどのように考えているのかを知ることができれば、世の中の流れを感じることができ、その時、自分は何をすればいいのかのヒントになるかもしれません。

 先物価格はただで手に入る情報です。使わない手はありません!
 使うか使わないか、新しい生活様式を求める世界を人々がどのように見ているかを感じるか感じないかは、あなた次第です!