簿記講座の講師ブログ

実務を始めたらちょっと混乱すること

皆さん、こんにちは!
簿記講座担当の小野です。

はやく夏休みにならないかなぁ!
固定資産を取得した時には、
付随費用を取得原価に含む処理を行います。

ただ、実務に出ると若干異なる扱いが可能です。

例えば、法人税法では「租税公課(取得税・登記料)、
購入契約の変更に伴う諸費用など」は
取得原価に含めなくてもよいとされています。

そうすると、初年度の費用が大きくなりますから、
初年度の税金が少なくなります。

一方、取得原価が小さくなる分だけ減価償却費が
小さくなりますので2年目以降の費用が小さくなり、
2年目以降の税金が大きくなります。

国税庁としては、結局はあとで
税金を払ってもらえるわけですから、
付随費用を取得原価に含めようが含めまいが
どちらでも構いません。

しかし、財務諸表ではその固定資産に関する費用が
毎年一定額(一定割合)で生じなければ、 株主は会社が
固定資産について何か操作をしているのではないかと疑心暗鬼になってしまいます。

そもそも、固定資産を定額法で減価償却するのは、
毎年同じような使い方をしているから減価償却費が
一定になるべきと考えているからです。

それなのに、初年度だけ付随費用分だけ費用が
多くなり、2年目以降は少なめの減価償却費が
一定額生じるというのは理屈が通りません。

こういったところにも「会計」と
「税務」の違いが出てきます。

しかも、法人税法では付随費用を
取得原価に含めなくても“よい”とされているのです。

つまり、付随費用を取得原価に含めるか含めないかは
会社の自由ということです。そのような規程なので、
実務では、できる限り初年度の費用を多くするために、
付随費用を取得原価に含めず、全額費用として
処理することが一般的なようです。

簿記検定は「会計」のルールに基づく処理が
求められますから、講義でもお話ししているとおり
「取得原価に付随費用を含めなければならない」
のですが、実務を始めると法人税法の規定をつかって
会計処理することも多く、

「えっ? 簿記のテキストでは付随費用は
取得原価に含めるって習ったのに、 なぜうちの会社
では付随費用を取得原価に含めないの?」という
疑問が生じるかもしれません。

しかし、上場していない企業の場合、
法人税法に基づく会計処理を行うだけでよいという
規定もあり、「もう何が何だか…」となってしまうかも
しれません。世の中、いろんな大人の事情があるんですね。