簿記のスペシャリストによるこっそり裏講義

 皆さん、こんにちは。

 2011年3月期決算から、包括利益の計算・報告が求められます。

 検定試験でいうと1級の内容ですから、報告される利益が今まで以上に振幅の激しいものになることが予想されています。

 包括利益とは、当期純利益に一部項目の時価評価損益を加減算したものです。その代表例が「その他有価証券」という有価証券の評価損益です。「売買目的有価証券」の時価評価損益については3級でも出題されるように、当期純利益を計算するときに加減算されます。1級の出題範囲に「その他有価証券」というのがありますが、この有価証券の評価損益が新たに当期純利益に付け加えられるようになるのです。

 その結果、損益計算書の末尾は当期純利益ではなく、「その他有価証券の」の評価損益が加減算された「包括利益」となります。

 このような計算もIFRSの影響が大きいといえます。アメリカでは1993年からIFRSでは1999年から包括利益の報告が行われており、日本でも2011年から報告されるようになったというわけで、やはり会計の国際化の影響で導入されたものといえます。

 そもそも「その他有価証券」とは「売買目的」でもなく、「満期保有」でもなく、「子会社株式」でもない有価証券です。そのほとんどは持合株式であるといわれています。株を持ち合うという習慣は日本企業に多いようで、日本企業は欧米企業に比べて「その他有価証券」が多いといわれています。

 その状況で大きな株価変動が起こると、時価評価損益が莫大な金額となりますから、包括利益が大きく振幅することになるわけです。中には当期純利益は3,000億円の黒字だったのに、包括利益は5,000億円の赤字になったという例もあります。

 一般の人は会計を詳しく知らないのですから、企業の業績として損益計算書の末尾に注目するといわれています。これまで損益計算書の末尾は当期純利益でしたが、これからは包括利益となるわけです。当期純利益に加減算される時価評価損益には、「その他有価証券」の時価評価損益、海外子会社に関する為替レート変動の影響、年金積立不足額(予定)など、主に時価変動に基づくものです。

 これからは、所有する資産・負債の時価変動のほとんどすべてが本業でのもうけに加減算される時代となり、経営者にとって自らが行っている事業のリスクを回避するだけでなく、株式市場や為替市場におけるリスクを回避することも大切な仕事になります。経営者の方にとってはますます大変な時代になりますね。



小野正芳

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