簿記講座の講師ブログ

所得税制の変更

 皆さん、こんにちは。
 
 参議院選挙における民主党の敗北によって、最近、消費税の増税論議がすっかり影を潜めました。その一方で、財政は非常に厳しい状態ですから、何とかして税収を増やさなければなりません。そこで提案されているのが、給与所得控除、配偶者控除、扶養控除の一部を廃止するということです。

 給与所得控除とは、税金計算を行う際に給与から差し引ける経費のようなものです。サラリーマンは会社から給与をもらっていますが、その給与を得るために様々な経費がかかるはずです。ただし、その経費を無条件に認めるとめちゃくちゃなことになってしまいますから、その経費が一律に決められています。たとえば、年収500万円の人は154万円を経費とすることが認められています。したがって、年収500万円の人の利益(所得)は500-154=346万円となります。この346万円の所得に税率が乗じられて税額が決まりますから、個人にとって、給与所得控除は大きい方がいいわけです。来年度の税制改正で年収1,000万円を超える人については、この給与所得控除の一部を廃止することが提案されているようです。

 また、配偶者控除は配偶者が専業主婦(夫)の場合に、38万円を経費として認める制度です。年収500万円の人に専業主婦(夫)の配偶者がいる場合だと、所得は500-154-38=308万円まで下がります。さらに、子供などの扶養家族がいればさらに38万円が経費として認められます。年収500万円の人に専業主婦の妻がいて、23歳以上の扶養家族がいると、所得は500-154-38-38=270万円まで下がります。配偶者控除については、専業主婦(夫)の配偶者がいるからといって税金を優遇するのは論理的ではないこと、23歳以上の扶養家族の控除については23歳以上の成年は働いて独立すべきで、被扶養者になるべきではないことが廃止の理由とされています。

 上の例は一例であり、細かい条件によって金額は変わってきます。ここで重要なのは、日本人の8割方を占める給与所得者(サラリーマン)にとって税金を減少させる形で機能していた各種控除がなくなり、支払うべき税金がアップするということです。

 もともとは消費税をアップして税収増加を図ろうとしていた政府が、所得税をアップして税収増加を図る方向へ転換したわけです。どちらがいいかは、高所得者なのか低所得者なのかに依存すると思いますが、一般に消費税アップは低所得者に厳しい税制で、所得税アップは高所得者に厳しい税制であるといわれます。

 つまり、消費税アップから所得税アップへ転換したことは、高所得者の負担が相対的に大きく、低所得者の負担が相対的に小さくなる税制に転換したということです。このまま所得税制の変更が行われてもいいですかね?