簿記のスペシャリストによるこっそり裏講義

 皆さん、こんにちは。

 ちょっと古い話ですみません。8月の初めに、アメリカの格付会社であるスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、アメリカ国債の格付けを1段階引き下げました。国債の格付けが下がるということは、アメリカ政府の利払い・返済能力が低くなったということを意味します。皆さんなら、利払い・返済能力が低くなった相手にお金を貸すとき、どうしますか? たぶん次の2つのどちらかでしょう。

 ①もう貸さない
 ②金利を高くして貸す

ただ、①は結局②につながります。お金の貸し借りをモノの売買に置き換えて考えてみればすぐにわかります。

 お金を貸したい人は、モノを売りたい人と同じ立場にいます。お金を借りたい人は、モノを買いたい人と同じ立場にいます。さて、モノを売りたい人が減って、モノを買いたい人が増えると、そのモノの値段はどうなるでしょう? 通常、そんな状態になれば、値段は上がります。お金の貸し借りに話を戻すと、金利が上がるんです。このように①のような人が増えれば、結局②につながるわけです。

 ところが、8月上旬以降のアメリカの金利は下がりました。アメリカ政府は信用力が低くなったのに、より低い金利で新たな借金をできる・・・。もう意味不明です。もし、住宅ローンを背負っている私の給料が減ったとします。生活が苦しくなった私は「銀行さん、まだ住宅ローンはありますが、生活が苦しくなったのでちょっとお金を貸してください。ただし、金利は住宅ローンより低くしてくださいね。」とお願いします。はい、間違いなく、即却下です。個人の生活ではそんな夢のような話はなさそうですね。しかし、経済全体(国レベル)になると、アメリカのような例が出てくるわけです。

 しかもこれは別におかしいことではなく、お金そのものの価値をコントロールすることができる国にのみ許された特権です。アメリカ政府は現在紙幣を大増刷しています。つまり、アメリカは印刷されたお金でジャブジャブ状態なんです。そんなにたくさんお金があると、お金の扱いが粗末になってきます。もうただ同然で使わせて(貸して)くれる人が出てくるんですね。だから、アメリカ政府にお金を貸そうとしている人は、金利を下げてくれるようになるんです。
自分の信用力が低くなったら、貨幣の価値を下げる。それによって、結局のところ、実質的には自分にとって何も変わらない状態にする。あぁ、やっぱり国って絶大な権力を持っているんだなぁ、と実感した次第です。



小野正芳

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