簿記講座の講師ブログ

所得再分配の一方で

 皆さん、こんにちは。

 最近は円高も定着してしまって大変の状態が続いていますが、政府も今年何度か為替介入を行い、何とか事態の打開を図ろうとしているようです。為替介入の当日は強烈に円安に振れるのですが、しばらくすると介入前の状態に戻ってしまいます。
さてこの為替介入ですが、政府は短期政府債券を発行して円を調達し、その円を売ってドル(ユーロ)を買うことによって介入しています。要するに、借金で調達したお金で為替取引を行っているわけです。3月は80円近辺でドル買い、8月は77円近辺でドル買い、10月は75円近辺でドル買いをしており、現在の状態では為替差損が出ている状態です。

 円高がきつくなると、FX等を通じて円売りをする人が出てきます。例えば76円くらいで円売りポジションをもっていた人は、政府の為替介入によって80円くらい円安になると為替差益を得ることができるわけです。為替介入が行われた時期は、円高がきつくなってそろそろ為替介入が行われるだろうという予測のもとで円売りポジションをもっていた人が多く、その人たちが円売りポジションを決済するために円買いすることによって、せっかく政府が円売り介入しても、しばらくすると介入前の状態に戻ってしまうという結果になっているといわれています。

 つまり、政府が借金して為替介入して抱えた為替差損は、FX等を通じて為替取引をしている人の利益となっているわけです。政府の借金はすべての国民が等しく返済します。FX等を行っている投資家はそれなりに資産運用をしている人でしょう。ということは、国民全体からある程度資産のある人に富が移転したことになります。

 今は折しも、東日本大震災で被った損失を国民全体で負担しようとしている時期です。もちろん、このような国民全体から被災者への富の移転に反対する人は誰もいないでしょうし、速く復興してもらった方が日本全体のためです。一方、為替介入は円安にして輸出企業を助けるために行われたはずですが、結果はさらなる円高を招いているだけでなく、国民全体から投資家への富の移転まで引き起こしています。

 さぁ、どうすべきですかね。