簿記講座の講師ブログ

住宅取得に伴う個人間の富の移転

 皆さん、こんにちは。

 住宅ローンの金利は借りる人によって違わないのはなぜでしょう?

 正社員であれば、たいていの場合、広告などで表示されている金利で借りることができるようです。場合によってはキャンペーンが適用されて、さらに金利が引き下げられるようですね。

 企業であれば、企業の信用力の差で借入金利は変わります。信用力の低い企業は高い金利を払わなければお金を借りることができません。大企業に比べて、中小企業の信用力はどうしても低くなってしまいますから( 絶対的な信用力ではなく相対的な信用力)、高い金利を払うことになるわけです。大企業はその規模および事業の多様性のため、すっからかんになって借金を返済できなくなる可能性が低いわけです。

 一方、個人であれば、借りることができるかどうかの審査はありますが、金利水準の審査はありません。一般に優良顧客は様々な面で優遇されるものですが、住宅ローンに限っては優遇はないんですね。例えば、預金をしている場合にはその預金額によってATM手数料が無料になるなどの優遇を受けることができます。

 また、個人の信用力はその個人が勤めている企業の信用力とある程度リンクしているはずです。個人が勤めている企業の信用力が高ければ、リストラされるあるいは給料が引き下げられる可能性が低いため、結果として個人が住宅ローンを返済できなくなるリスクも低くなるはずです。逆に、個人が勤めている企業の信用力が低ければ、リストラされるあるいは給料が引き下げられる可能性が高くなり、結果として個人が住宅ローンを返済できなくなるリスクが高くなるでしょう。

 つまり、企業にお金を貸すときに企業の信用力によって貸出金利に差をつけているのに対して、個人にお金を貸すときには個人の信用力によって貸出金利に差をつけないということは一貫していませんね。

 さらに、個人に貸し出すときに金利に差をつけないことによって、信用力の高い顧客から信用力の低い顧客への富の移転が生じます。本来ならば信用力の高い顧客はより低い金利で住宅ローンを組めるはずであり、信用力の低い顧客はもっと高い金利を払わなければならないはずです。つまり、信用力の高い顧客は本来よりも多くの利息を支払い、信用力の低い顧客は本来よりも少なめの利息を支払っていることになるわけです。

 私が住宅ローンを組む場合にはたぶん後者のほうに入るでしょう。お金持ちさん、ありがとう!