簿記のスペシャリストによるこっそり裏講義

 皆さん、こんにちは。

 さて、今年も年始から、「あ~あ、またか」と思わざるを得ないニュースが報道されました。いったい、どこまで行くのでしょう?
現在、法律によって、企業では65歳まで雇用を延長することが求められるようになっています。年金の支給開始時期が65歳からに変更されるためです。国民年金の支給開始はすでに65歳からになっています。一方、厚生年金の支給開始は60歳から65歳に変更中であり、2025年度より、男性は完全に65歳からの支給となります。そのため、2025年度までに、企業は65歳まで雇用し続ける仕組みを整える必要があるわけです。

 国にとってみれば、年金という国民への支払いを5年遅らせることによって、国家財政の悪化を防ぐことができます。少子高齢化の影響で年金財政は悪化の一途をたどっていますから、年金財政の健全化は最優先課題の1つなのでしょう。
しかし、単に国は支払いを減らせばいいというわけではありません。支払い開始を5年遅らせるということは、国民の寿命が不変だとすれば、国民にとってみれば年金総受取額が減るということですから、その分国民の財産が減ることになるでしょう。つまり、支払い開始時期を遅らせるという行為は、国による国民の財産の没収なんですね。ですから、国は少なくとも経過措置として、支払い開始時期が遅れることによる財産の減少を補填しなくてはなりません。そこで、企業へ65歳まで雇用を義務づけて、企業が給料を払うという形で解決しようとしているわけです。
しかし、企業にとってみれば、65歳まで雇用を延長すると5年分多く給料を払わなくてはなりません。ただでさえ、企業は、グローバル競争に巻き込まれて、また6重苦というハンデを負っているのに、さらに負担を押しつけられたわけです。

 そこで、NTTは40歳以降の従業員の賃金水準を下げて、そこで浮いたお金を使って60~65歳の従業員に給料を支払い、総額として給料支払額を変えないような新賃金カーブを発表しました。すでに労組と合意したそうです。

 それなら、65歳まで雇用を延長しなくていいでしょう。なぜなら、NTTの案は、給料は同じだけど労働時間が5年分長くなるという案だからです。それじゃ、意味ないですよね。だって、年金を受給するのが65歳からになり、生涯所得が5年分少なくなるから、その分を企業に補填させることが、新制度の真の狙いだったはずだからです。ちなみに、この制度が始まる最初の5~10年は若年層から退職間際の人たちへの富の移転をも意味します。だって現在の60歳くらいの人たちはこれまで通常通りの給料をもらってきた上で、新しい制度に乗り換えられるのですから。NTTのような大企業がそんな制度を構築すれば、「NTTもやっているんだから」という多くの企業が取り入れるようになり、若者の本来あるべき将来の財産がどんどん高齢者層に絞りとられるでしょう。



小野正芳

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