簿記のスペシャリストによるこっそり裏講義

 皆さん、こんにちは。

 最近、新聞・ニュース等で公務員の早期退職が取り上げられていました。

 現在、政府は、大震災関連費用を捻出するため、国家公務員の給料を平均7.8%引き下げています。その流れで地方自治体にも教職員の給料を引き下げるよう迫っているわけです。そこで、地方自治体は昨年末頃、今年の2月以降に退職する教職員の退職金を引き下げるよう決定しました。

 教職員の立場からすると、これによって2月以降退職すると退職金が引き下げられます。今まで40年近く勤めてきて、退職間際に「退職金減らしますよ。勘弁してね。条例だからね。」といわれると、大震災のためとはいってもなかなか納得できないでしょう。しかも、日本では退職金を老後資金として支払われる“給料の後払い”と位置づけています。つまり、退職金とは「本来なら毎月給料として支払うべきものを、退職時にまとめて支払う」ものなんですね。今回の決定は、理屈上は、毎月給料として支払うべきものの修正はせずに、退職時にまとめて支払う分だけ減額するという乱暴な決定なんです。ちなみに、1人あたり平均150万円引き下げられるそうですから、かなりの額ですね。「後で払うからね」と約束されていた150万円について「やっぱり払わないから」といわれたわけです。

 しかし、この問題の報道機関による取り上げられ方は「教職員の駆け込み退職をどう思いますか?」です。「生徒の卒業1ヶ月前に退職してしまう教員をどう思いますか?」です。報道機関は、もう完全に政府の言いなり状態ですね。

 教職員の駆け込み退職は結果(実際に起きている現象)で、それを引き起こしている原因は条例による突然の退職金引き下げです。起きている現象についてどれだけ議論しても、原因を除去しなければ何の意味もありません。内臓が悪くてたくさんの出血が起こっているのに、出血を止めて喜んでいるようなものです。でも内臓は治療されていないので、そのうちまた出血してくるでしょう。表面的に見えるものにばかりに意識が集中し、その背後にある実体(本質)に意識が至らないという好例ですね。

 公務員は現代の攻撃の対象です。民間の人たちはデフレ・景気の悪さで苦しんでいるのに、公務員は安定して給料をもらっている。民間の人たちが払った税金から給料をもらっているくせ、公務員だけが安定しているのはけしからん。そんな感じですよね。

 財政をよくしたい=支出を減らしたい政府・地方自治体がこの世論を使わない手はありません。退職金を減らされる教職員が2月にやめると、「生徒の卒業直前にやめるなんて」という批判が必ず出ると予想して、世の中の目をそちらに向けさせました。そして、個人に責任をとらせる(批判を受けさせる)形で、自らの財政を改善させているというわけです。そして、報道機関も退職金減額自体についてはほとんど報道せず、「卒業直前にやめる教師」というタイトルで報道するわけです。「あ~ぁ」という感じになってしまいますね。



小野正芳

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