簿記講座の講師ブログ

外資ファンドへの感情的反応

 皆さん、こんにちは。

 西武鉄道を運営する西武HDに対して、株主であるアメリカの投資ファンド(サーベラス)が資産・事業の売却を迫っています。中でも、サーベラスが、赤字の路線の廃止と西武ライオンズの売却を求めていることがクローズアップされていました。

 関係する県の知事たちは、鉄道路線を廃線に関して、「公共交通機関と儲けを同列に考えて廃線を提案するのはけしからん」と、プロ野球のコミッショナーは、西武ライオンズの売却に関して、「プロ野球は公共財なので儲けだけを考えて売却するのはけしからん」といっています。“鉄道も野球も公共に資しているので、投資という視点から見てはならない”というのです。

 また、あるテレビ局が球場にきていたお客さんにインタビューしていました。「西武ライオンズが売却されるかもしれないことについてどう思いますか?」「利益だけを追求してはいけないですね。」

 もうこれは、全くのコミュニケーションの破綻といっていいでしょう。当然、知事もコ
ミッショナーも、優秀なだけでなく今まで様々な経験をしてきている人たちでしょう。ですから、西武HDが株式会社であることを知っているはずです。しかし、そもそもの株式会社という仕組みに触れてしまうと、何も反論できなくなるので、国民の感情に訴えるようなことをいっているのだと思います。わざと非論理的な話をしているとしか考えられません。

 株式会社は、不特定多数の人たち(株主)から資金を集め、それを営利活動に投入し、得られた利益を株主に分配する仕組みです。株主は企業に資金を提供し、自らが株主総会で選んだ経営者に企業の運営を任せるわけです。ですから、株主は委託者で、経営者は受託者であるととらえられます。

 つまり、今回の話は、企業経営の委託者(株主)と受託者(経営者)の間のやりとりであり、株主と経営者以外の人が口を挟むような問題ではないわけです。株主以外の人が口を挟めるとすれば、「サーベラス以外の株主が、公共を大事にして、鉄道の廃止やライオンズの売却に反対して下さい」とお願いすることくらいでしょうか。

 どうしても外国の投資ファンドが絡むと、“儲け”が全面に出てきて、その視点から議論されることが多くなってしまうように感じます。出される意見は、議論というより「俺はイヤだからやめて」的なニュアンスの発言です。

 もちろん、地域住民は企業の利害関係者であり、鉄道の廃止に関して意見を言う権利があるという考え方もあるでしょう。しかし、それは“儲け”とは別に議論されるべき事柄ですね。