簿記講座の講師ブログ

NISAの特徴の理由

 皆さん、こんにちは。

 今回もNISAの話題です。
 NISA制度は100万円までの投資元本に対する配当金、売却益に課税されないという、投資家にとってお得な制度です。ただし、デメリットもいくつかあって、前回は損益通算できない点を紹介しました。もう一つ大きなデメリットして、一度その枠の中で売却してしまうとその枠を再利用することができなくなるという点が挙げられます。
 たとえば、平成26年1月1日に日経平均株価に連動する投資信託を100万円分購入したとします。運良く、平成26年6月30日にその投資信託が120万円に値上がりしたので売却しました。一般口座での売買であれば20万円の売却益に対して所得税・住民税が課税されますが(平成26年は20.315%)、NISAのもとでは所得税・住民税は課税されず、まるまる自分の取り分となります。
 そんな特典がある一方で、6月30日の売却によって、平成26年中に使える非課税枠はなくなります。もう一度100万円分の投資信託を購入してもNISAの非課税の対象とはならないのです。つまり、1年に累計100万円分までの投資に関する配当金、売却益だけが非課税の対象なのですね。このことから、NISAは長期投資のための制度ともいわれます。
 なぜこのような制度となったのでしょうか? いろいろな解説がなされていますが、その中に「金融庁と金融業界の戦いの結果」という説がありました。
 現在、日本の投資家が保有する投資信託・株式の平均保有期間は約2.1年だそうです。欧米では個人年金の原資として、個人が株式投資等で資産を形成することが一般的です。欧米人の個人資産の約5割は株式であり、その平均保有期間は10年を超えます。それに比べて日本では、個人資産に占める株式の割合は1割程度です。少子高齢化が進むこの時代において、政府は個人に対して、年金を当てにせず個人資産を形成してほしいという気持ちを持っています。そのため、NISAを使って株式等への長期投資を促したのでした。
 では、そもそもなぜ日本では平均保有期間が短いのでしょう。その原因として金融機関の販売体制が挙げられています。株式や投資信託は売買時に手数料がかかります。金融機関の儲けの元です。たくさん(頻繁に)売買してもらえれば金融機関が受け取る手数料が増えるわけですね。そこで、金融機関は顧客に対して、頻繁に投資の乗り換えを進めるのだそうです。
 これは個人の資産となるべきお金が金融機関に移転することを意味しています。金融庁はこんな状態を変えるために、NISAを長期投資しなければメリットのない制度にしたとのことです。
 でも、そもそも個人が自分の意思で売買すればいいのであって、金融機関の販売体制のせいではないのでは? と思ったのでした。