簿記講座の講師ブログ

本当に庶民いじめ? その2

 みなさん、こんにちは。

 さて、企業vs.人間という対立構造が存在しうるか、考えてみましょう。
 企業は活動するためのヒト・モノ・カネを必要とします(経営資源ともいいます)。皆さんの職場を想像してみてください。事業を行うために従業員(ヒト)は絶対に必要でしょう。しかし、従業員だけでは業務を行うことはできません。業務を行うために道具(モノ)が必要ですよね。フォーサイトであれば、講義を収録するためのスタジオ、撮影機器、編集機器など様々な道具が必要です。道具を調達するためにはお金が必要です。そのお金=事業活動のための元手は誰が出すのでしょう? その事業活動に必要なお金を提供しているのが株主であり銀行ですね。そもそも私たち個人が持っていたお金なんですね。
 このように、現代の経済社会では、個人が所有する金融資本と人的資本が企業という受け皿に投入されて、様々な経済活動が行われています。企業って、人間が所有する金融資本と人的資本をまとめた存在なんですね。したがって、企業に対する悪影響は最終的に人間に対する悪影響として現れます。人的資本を提供している人間に悪影響を及ぼすか、金融資本を提供している人間に悪影響を及ぼすかは、その影響の中身によって異なりますが、いずれにしても企業(法人)は人間の集合体なのですから、人間に影響を与えるに決まっているのです。
 では法人税減税とは企業(法人)にどんな影響を与えるのでしょう? 法人税が減税されれば企業のコストが減り、利益が増えます。企業活動において、税金って、利益を減らすコストですからね。法人税が減ることによって利益が増えれば、その使い道は3つしかありません。企業は金融資本と人的資本を集めて事業を行っているのですから、ヒトに使うか、モノに使うか、カネに使うかの3つしか使い道はありません。
 ヒトに使うとは従業員の給料を上げたり、新たな従業員を雇うということです。モノに使うとは事業を拡張することです。カネに使うというのは金融資本の提供者(株主)に払う配当を増やしたり、企業が貯め込むことです。理論的には、企業が利益を貯め込めば、企業の価値が増加しますので、その分だけ株価が上がり、株主に売却益をもたらします。
 このように、法人税の減税は、基本的には金融資本と人的資本をまとめている企業にとっていいことですから、その資本を提供している人間にとってもいいことなんですね。社会構成上、企業と人間は一蓮托生なのですから、企業vs.人間という対立構造はあり得ないのです。あるのは、人間の中での対立、つまり、従業員vs.株主vs.経営者ですね。
 それでもまだ腑に落ちないかもしれません。「俺の給料は増えないけど消費税はアップするのだぞ」と。では、次回、その不満の原因を考えてみましょう。