簿記講座の講師ブログ

経済学でも簿記と同じことが・・・ -その1-

皆さん、こんにちは。 
簿記講座担当の小野です。
2月検定受検の方は最後の追い込みをがんばって!
6月検定受験の方は今日もいつものペースで勉強しましょう!

「留保利益が多い企業はそれを使って人を雇え!」
リーマンショックのとき、少なくない政治家が叫んだ、美しいけれども、
実現可能性はそれほど高くないスローガンです。簿記を勉強している方は、この主張の虚しさがすぐにお分かりになるでしょう。

留保利益は純資産の「繰越利益剰余金」のことであり、貸方の項目です。
人を雇うと給料という名目で「現金」を支払う必要がありますが、「現金」は借方の項目です。
上のような主張をする人は、儲かっている(=「繰越利益剰余金」が多い)企業は、たくさんの「現金」を持っていると思い込んでいるんですね。
しかし、儲かっている企業にたくさんの「現金」があるとは限りません。
儲けた分だけ増えた「現金」をすぐに次の仕入れや設備投資に使っているかもしれないからです。
簿記・会計の世界で「儲け」と「現金」は別物です。

誤解に基づく主張は、経済学の世界でも生じているようです。
トランプさんは「国内の雇用を増やそう! そのために、輸入を減らして、自国で作ろう!」と叫んでいます。
経常赤字の相手国である中国、ドイツ、日本からの輸入を減らせと叫んでいるわけですね。
経常赤字が悪みたいになっている気すらしますが…。でもでも、輸入を減らしても、経常赤字は減りません。

経常赤字は貯蓄<投資の時に生じるものです。国内の消費活動が活発だとしても、
国内に資金がなければ消費するための財を生み出すための投資(工場を立てるなど)ができないので、
海外から財を持って(輸入して)こなければなりません。

つまり、国内に金がないから国内でモノを作れないけど、
みんなたくさん消費したいから、輸入せざるを得ないということです。

よって、経常赤字を解消するためには輸入をやめるのではなく、
国内の貯蓄を増やすことが大切というのが経済学の教えるところなのですが、
直感的に“輸入反対!”ってなっちゃっていますね。

これで本当に輸入を減らしてしまうと、さらに大変なことが起こります。
皆さん「比較優位」ってご存知ですか? それは次回に!