簿記講座の講師ブログ
株価は上がっているけれど…

皆さん、こんにちは。

 簿記講座担当の小野です。

 別れと出会いの季節。悲しかったり、楽しかったり。

 世界の株価がどんどん上がっています。先日、日経平均株価は30,000円を超え、30年ぶりの高値となりました(この原稿の執筆時点でも29,000円を超えて、かなり高い水準です)。決して景気がいいようには思えないのですが、バブル末期の株価を回復したわけです。バブル期くらいの景気になっているのでしょうか、日本の株式市場で何が起こっているのでしょうか?

 日経平均株価が上がっていると聞くと株価全体が上がっているようにも見えますが、よく見てみると、一部の株だけが狙い撃ちで買われているようです。全体的に上がっているわけではなくて、ポイントは2つあると思います。

 1つは、一部景気がいい業界があって、そこの業界の企業の株価が上がっているということです。おそらく、今、一番景気がいいのは、半導体業界で、日本の場合、半導体製造装置で世界3位の東京エレクトロンや半導体検査装置の世界大手アドバンテストのような半導体を製造する機械を作っている企業ですね。

 いずれも、ここ3~4年で売上高4割くらいアップ。利益倍増。その結果、株価は東京エレクトロンが3倍、アドバンテストは4倍にもなっています。半導体はコンピュータに必ず必要なもので、ITの進展で、世界にはますますコンピュータが必要になるから、まだまだ半導体業界の景気は良くなると予想されています。

 ここで気になるのは、利益倍増くらいでなぜ株価が3倍・4倍になるのかってことでしょう。多分、ワクチンが効いてきたら世界経済が復活して、これらの企業の利益がもっと増えると考えられているのでしょう。

 もう1つのポイントは日経平均株価・TOPIXに含まれる企業の株価が上がっているってことです。

 日経平均株価は日本を代表する大企業225社の株価の平均、TOPIXは東証一部上場企業およそ2,000社の株価の平均です。日経平均・TOPIXに含まれる企業の株は、日本銀行やGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に買ってもらえます。

 日銀は、世の中にお金を供給するために国債や株を買っています(購入代金を払う形で世の中にお金を供給します:金融緩和)。GPIFは国民から預かった年金積立金を運用するために国債や株を買っています。莫大なお金を持っているから、どこかの会社の株を買い占めることが簡単にできるので、日銀・GPIFが株を買うときは、日経平均株価やTOPIXに含まれる企業の株を機械的に買うことだけしか、認められていません。

 そのため、ヘッジファンドなどが、日銀・GPIFが買うであろう日経平均・TOPIXに含まれる企業の株を先回りして買って、ただでさえ株価が上がっているところに、日銀・GPIFも買うから、企業の実態が反映された株価をはるかに上回る株価になってしまう可能性があります。

 そのため、日経平均やTOPIXに入らない企業の株価はあまり上がりません。例えば、日銀やGPIFが買わない東証2部の企業のうち半分くらいは3~4年前より株価が低い状態です。

 また、東証1部には2,000社もあるから、日銀・GPIFがほんの少ししか買わない株もあって、当然、あまり買われない株の価格はそれほど上がらない状態です。

 結局、買われているのは超大企業の株が中心ということになり、超大企業ばかり=時価総額が大きいので日銀・GPIFがたくさん買う株ばかりの日経平均株価はここ3~4年で1.5倍になっているけど、それほど大きくない会社も含まれる東証1部全体(TOPIX)は3年前とほぼ同じです(つまり、上がっていません)。

 要するに、日経平均だけが爆上げして、東証1部は横ばい、東証2部は少し下がっている状態で、一部の資産だけが異様に上がっているので、局所的なバブルっぽい感じがしなくもないというわけです。

 バブルっていうと土地をイメージするけど、地価はどうでしょう?

 東京が1割くらい上がっているけど、千葉・神奈川・埼玉・愛知は1~2%アップしただけ、大阪ですら横ばいという状況です。土地をみても、上がっているのは一部だけって感じです。

 1980年代のバブル景気のころは、ほとんどすべての資産価格が上がり、物価も継続的に上がって、給料も順調に上がっていました。一方、バブル末期の株価を回復した現在、上がっているの一部の株だけという状況です。  株価も土地も局地的な動きで、報道などでは、上がっているところだけを見せられているのかもしれません。