簿記講座の講師ブログ
株主から見たTOB-持っている株にTOBがかかったら?-

皆さん、こんにちは!
簿記講座担当の小野です。

“食欲の秋”が過ぎていき、実績が上がってきた
(お腹が出てきた)今日この頃です。

皆さん気をつけましょう!

ここ最近、コロワイドによる大戸屋のTOB、
NTTによるドコモのTOB、ニトリによる島忠のTOBなど、
TOBという言葉を聞く機会が多いようです。

買収する側が株を買い集めて
1つの会社になる企業買収手法であり、
企業買収は簿記2級試験でも出題される取引ですね。

簿記2級試験では
買い取る側の処理が問われますが、
買い取られる側ではTOBってどう見えるのでしょうか?

最近はコロワイド、NTT、島忠で話題になったけど、
それ以外にも多くの有名企業がTOBしています。

上場企業だけでも、2020年はここまで26件、
だいたい月に3件ペースですね。TOBする理由は様々で、
敵対的なケースもあるし、もともと仲が良かったケースもあるようです。

TOBでは、買収する側が、買収される側の会社の株を
持っている株主から株式を買い集めていきます。

買収される側の会社の株をまとまって持っている人がいれば、
その人からまとめて買えば話ははやいわけです。

コロワイドのケースでは、コロワイドは、
大戸屋の株の20%を持っている創業者の家族から、
その20%分をまとめて買い取りました。

でも、それだけでは大戸屋を買収できないので、
大戸屋株を持っているいろんな人から買い集めることにしたわけです。

東京証券取引所で、
「大戸屋の株式を1株3,081円で買い取りま~す」って
宣言して、30%分(200万株くらい)の買い注文をして、
いろんな人が売ってくれるのを待ちました。

ここで、「なんで3,081円って宣言するの?
もっと安く売ってくれる人がいるかもしれないのに?」って
疑問が浮かぶでしょう。

しかし、買いたい人が多いと株価が上がるから、
普通の注文方法はとれないんです。

200万株も買い注文を入れると、市場では
「めちゃくちゃ買いたがっているやつがいるぞ!」って
噂になって、その株が超値上がりしてマネーゲームが始まっちゃうんですね。
ですから、一定価格で買い注文を入れるTOBという手法がとられます。

そのとき、大戸屋株を持っている人は、
その株を売らなかったらどうなるのでしょう?
コロワイドの買収後も大戸屋株は引き続き上場されているので、
いつでも売却できます。

コロワイドは大戸屋を買収したといっても、
大戸屋株の47%しか持っておらず、残りの53%分は
いろんな人が持っていて、今も売買されていますね。

ちなみに、11/13の終値は1,953円…。

大戸屋の株主は、9/9までは
3,081円で売ることができたんだけど、
11/13の時点では1,953円でしか売れません。

ほとんどのTOBではTOB価格は高く設定されるので、
TOBで売ったほうが有利なケースも多いんです。

もちろん、コロワイドの買収後に大戸屋が生まれ変わって、
株価アップにかけるというのもありで、今回も、53%の人が買収後に
大戸屋が生まれ変わるほうにかけたわけですが、今のところ、株価だけを見ると…。

このように、TOBだからといって
必ず売らなければならないというルールはありませんが、
完全子会社化を目指すTOBの場合は絶対に売ったほうがいいですね。

完全子会社化を目指す場合、
買収された側の株式がTOB後に上場廃止になり、
買収後はその株を自由に売買できなくなるからです。

NTTがドコモにTOBをかけていますが、
NTTはドコモを完全子会社にする予定で、
TOB後、ドコモ株は上場廃止になる予定です。

上場廃止によって、東京証券取引所で
ドコモ株を扱ってくれなくなるので、TOB後にドコモ株を売りたくなったら、
自分で投資家を訪ねて回って、買ってくれる人を探さないといけなくなります
(それは大変!)。

なお、今回のドコモへのTOBは規模・影響が大きいからか、
TOBに応じない人からも、TOB後に強制的に買い取るみたいです。

上場廃止になると大変なんです。
一方で、TOBに当たるととってもハッピーになる可能性大です。

日本には3,000~4,000社の上場企業があり、
そのうち年間30~40社がTOBされています。

その確率は1%だけど、結構なお値段で買い取ってくれるのが
TOB(絶対買収されない企業を除けば、
TOBに当たる確率はもっと上がるかもね!)。

過去の取引関係調べて仲良し企業を探し、
TOBされそうな会社を探すのも面白いかもね!