簿記講座の講師ブログ
ちょっとうらやましいダイナミズム

 皆さん、こんにちは!

 簿記講座担当の小野です。

 暑いし、ムシムシしてきたし、快適な環境を作るのが大変ですね!

 やはり、これだから、アメリカはあらゆる面で強いのかと思ってしまいます!

それは、AIを使った安全保障政策を考える人工知能安全保障委員会(NSCAI)の委員長にエリック・シュミット氏が経済を強くするための競争政策を実行する連邦取引委員会(FTC)の委員長にリナ・カーン氏が、就いているということです。

エリック・シュミット氏は多くの方がご存じでしょう。元GoogleのCEOですね。IT業界のトップといえる方でしょう。そんなシュミット氏の現在の仕事がNSCAI委員長です。NSCAIは人工知能(AI)を使った安全保障体制を考える組織です。

先日のブログのとおり、世界はAIを使った軍事力の構築に動いています。その時、軍関係者だけで事を進めるよりも、ITの専門家が入っていると様々な視点からの検討が行われる可能性が高くなり、より完成度の高い軍事力になるでしょう。

シュミット氏のような人物が委員長になり、

・中国のAI技術力が飛躍的に進化し、アメリカに肉薄しつつあること

・アメリカは常に中国に2~3年の差をつけておく状態を維持する必要があること

・半導体技術、エネルギー、生物学といった関連する領域と強調した政策をとること

・ただし、民主主義に基づいたAI技術であるべきこと

・アメリカはアジアの友好国と強力な関係を維持しなければならないこと

といったように、アメリカが中国に対抗するために必要な事柄をどんどん提言し、実行に移しています。

アメリカのIT業界の方々はリベラルを愛しているから民主党支持者が多いといわれています。バイデン大統領に代わってから対中国政策がキツくなってきたのは、こういったIT業界のトップの方々の提言を積極的に取り入れているからかもしれませんね。

リナ・カーン氏はまだ32歳の若手研究者(コロンビア大学准教授)ですが、学生時代に発表した新たな競争政策に関する論文が評価され、FTCの委員長になりました。

1970年代以降、日本の低価格・高品質な商品に対抗するため、アメリカは企業を合併させて大規模にして効率性を高め、日本企業と競争する政策をとりました。その政策が40年以上続いて、アメリカに多くの巨大企業が存在するに至り、世界で最も強い経済を作り出しました。

しかし、産業の中心が製造業からIT企業にシフトすると、企業を大規模にする政策はうまく機能しなくなりました。製造業は物理的なモノを扱いますから、規模を大きくすると必ず工場・人手が必要になり、多くの従業員を雇わなければならず、多くの人々を豊かにします。しかし、IT企業が扱うWebサービスは工場・人手をそれほど必要としません。規模を大きくしても経営者層のみが豊かになり、それ以外は全く豊かにならないという現象が起き始めているのは、多くの方がご承知のとおりですね。

そんな中で企業が盛んにM&Aを行って企業規模を大きくすると、これから新しいモノ・サービスを生み出すであろう新興企業が早々に(成長する前に)IT企業に買収されてしまい、競争が起こらなくなり、経済全体が衰退してしまいます。

リナ・カーン氏の論文は、「M&AはWelcome」から、「M&AはNG」という政策に転換する必要があることを主張するものであり、その主張をした研究者が、政策実施機関の委員長になっているわけです。

私が注目したいのは、シュミット氏・カーン氏がスゴイ人というのはもちろんですが、こんな人選は日本ではあり得ないことだという点です。日本で言えば、トヨタの豊田社長が国土交通大臣になってコネクテッドカー政策を実行したり、京都大学の山中教授が厚生労働大臣になって再生医療政策を実行したりするような感じでしょうか(お二人ともすでに重鎮で、若手ではありませんが…)。

任命される方がスゴイのはもちろんですが、国の政策を実行する責任者として、平然と、民間経営者・若手研究者を任命する議会の適応力もすごいなぁと思います。

政策が実効性を持つためには、その政策がうまく作られていることはもちろんですが、どんな人が実行するのかという点も重要です。現代においては、アメリカのような多様性を認めて、重責を担ってもらうことを厭わない社会は少しうらやましくもありますね。