簿記講座の講師ブログ

 皆さん、こんにちは。
 簿記講座担当の小野です。
 暑い日の中、突然涼しい日があったり。絶対に体調は崩さないように! 

 商売のサイクルとしてすぐに頭に思い浮かぶのは、
 ①お金を用意する
 ②そのお金で売るものを調達する。
 ③調達した商品を売る。
 ④お金を回収する。
 という流れでしょう。

 もちろん、ある程度信用ができれば、掛け仕入ができますので、売るための製品を買うためのお金を全額用意する必要はなく、売った代金で支払えばいいのですが、売った後の代金回収にも時間がかかることがありますので、最初にある程度のお金を用意しておくのが一般的です。

 これらの状況を表す指標として棚卸資産回転日数、売上債権回転日数、買入債務回転日数という指標があります。
 
 ・棚卸資産回転日数:仕入から販売までの日数(昨年のトヨタは50日)
 ・売上債権回転日数:売ってから代金回収までの日数(昨年のトヨタは39日)
 ・買入債務回転日数:仕入から代金支払までの日数(昨年のトヨタは59日)

 例えば、トヨタの例で言えば、次のようなイメージです。

 7月1日:部品の仕入(掛け)
 8月19日:自動車の販売(7月1日の仕入から50日後)
 8月28日:仕入代金の支払(7月10日の仕入から59日後)
 9月27日:販売代金の回収(8月19日の販売から39日後)

 このように、トヨタの場合、8月28日に仕入代金を支払いますが、販売代金は9月27日にならないと入ってこないので、8月28日に支払代金を用立てる必要があります。

 7月1日に仕入れて製造開始した分、7月2日に仕入れて製造開始した分・・・というように、毎日このサイクルが始まって、めまぐるしく代金支払日と代金回収日が訪れます。代金支払日に手元にお金が準備できていなければ大変なことになります。ですから、これら3つの指標を使って、自分の会社では支払日と回収日に何日の差があるか、その日数分だけ借り入れを行うことができるかなどの意思決定をしていくことになるわけです。

 これまではトヨタのような例が一般的でした。ですから、8月28日の仕入代金の支払に困らないように元手をしっかり準備する必要があったわけです。

 ところが恐るべき会社が表れました。イーロン・マスク氏が率いる電気自動車メーカーのテスラです。昨年のテスラの3つの指標は次のとおりです。

 ・棚卸資産回転日数:45日
 ・売上債権回転日数:13日
 ・買入債務回転日数:73日

 棚卸資産回転日数はトヨタより若干短い程度です。車を作るのは大変な作業で、トヨタより1割少ない時間で製造するのも大変なことなのでしょう。
 売上債権回転日数は圧倒的にトヨタより短いですね。テスラの車は人気がある高級車なので、お客さんが先に代金を払うケースも多いようで、販売すればかなり短い時間で代金を回収できるようです。
 買入債務回転日数の長さもテスラの特徴といえるでしょう。つまり、支払いを待ってもらえているわけですね。

 テスラの日数を見ると
 ・棚卸資産回転日数+売上債権回転日数:58日
 ・買入債務回転日数:73日
です。
 つまり、部品等の仕入日を起点に見ると、58日後に販売代金を回収しますが、部品代均等の支払は73日後ですから、販売代金回収後に支払をしていることが分かります。驚くべきことに、仕入時にお金を持っていなくても、その後の販売代金ですべて支払を済ませてしまえる状態=元手がいらない状態を作り上げているのです。しかも、代金回収から支払までに15日間あり、その間は販売代金をまるまる運用してさらに増やすこともできます。

 そうやって効率的に増やしたお金がロケット開発などに回り、さらにお金を生み出す好循環を作っているのですね。テスラ、超恐るべしです!