旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

現場の目でJRの「裏技」を考える

前回まで、4回に渡りJRの「裏技」計算の例をあげました。ちょっと行程やキロをいじると、運賃がおトクになることは、いくつもあります。なかでも、行程を分割すれば安くなる例は、合法的でありながら「邪道」ともいえます。JRの運賃計算ルールの大きな矛盾点といえるでしょう。

さて、ここまでの各例では、「試験では絶対やってはいけません!」と言ってきました。国家試験では、原則ルールどおりに計算しないと誤りになると、繰り返しお伝えしました。

でも、実際に旅行業者の社員としてカウンターに立って、旅行者から相談を受けたときに、どう対応すべきでしょうか?

たとえば、5月の第3回ブログで書いたように、東京-新神戸の往復旅行で、西明石までキロを伸ばせば運賃がおトクになることがわかりました。実際に、カウンターに旅行者が来て、「東京-新神戸の往復乗車券がほしい」といわれたときに、「これは、往復割引がききませんので、普通運賃の2倍の額になります」と答えて、シレッとしていいものでしょうか。

もちろん間違っているとまではいいませんが、プロである旅行業者の社員-それも旅行業務取扱管理者であるならば、「お客様、ひと駅先の西明石までの往復にすれば往復割引がきき、駅弁と缶ビール1本分おトクになりますよ」と答えてあげたいものです。それがプロの技と言えるでしょう。

運賃が安くなって、怒る人はまずいないでしょう。喜んで、その担当者にお土産を買ってくるかもしれません。その他の裏技でも同じです。ひとひねりすれば、お客様に喜ばれる方法はいくらでもあります。

機転と応用が生かせないのは、試験というものの宿命でしょう。国家試験では、「ひとひねり」は誤りなのです。受験者の皆さんは、原則通り、かたくなにルールを守らなければなりません。

しかし、ちょっと知恵を働かせれば答えが変わるような問題は、出題してほしくないものです。先月の第3回ブログで紹介した新倉敷-飯田の往復のような問題を見ると、残念でなりません。まさに試験のための試験で、現場を知らないのでは? と言いたくなります。原則を重んじるならば、原則しか通用しない問題を出してほしいものです。

せっかく試験に合格した以上は、現場でも生きる知識がほしいですね。でも「現場対応」ほど、試験問題にするのは難しいものなのかもしれません。

まあ裏技の類いは今後生かせる知識として、試験は割り切って「原則最優先」でいきましょう。