旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

国内航空運賃いまむかし

総合・国内試験では、どちらでも国内航空運賃に関する問題が出題されます。日本航空(JAL)と全日空(ANA)の大手2社から、主として割引運賃の種類と適用条件が問われていますが、2社で規定が異なる点が多いので、覚えづらいですね。また、払い戻しの計算問題が出されることがありますが、運賃そのものの割引計算は出されていません。JR分野とは、少し性格が異なっています。

長い試験の歴史で見ると、昔-平成の初期まで-は、現在とかなり違った問題が出題されていました。当時は、日本航空と全日空の他に、日本エアシステム(JAS)という航空会社(空調会社みたいな名称ですが)があり、これらを「大手3社」と呼んでいました。その後、JASはJALに経営統合されます。

当時は、3社とも運賃名称、運賃・料金額や諸規則は同じでした(当時の運賃は運輸省の認可制)。まったくの横並びであり、「3社に共通のものしか出題しない」という不文律もありました。また、現在の「特定便割引」をはじめとする多様な割引運賃の設定はなく、往復割引(現在ANAでは廃止)、身障者割引、スカイメイトくらいしかありませんでした。一方で、今はなき「家族割引」「団体割引」というものもありました。

試験問題はこれらの割引計算が定番で、普通運賃の額から○%割り引くというルールでした。現在のJRの運賃計算と似ています(ちなみに、現在の各種割引運賃はこのような割引計算はせず、各社の独自判断で運賃を定めています)。

割引計算の中でも、特に端数の処理が厄介で、幹線区間については100円未満の端数について「24捨25入、74捨75入」を行うというルールだったのです。「???」ですよね。どういう意味かというと、運賃の額は50円単位(現在もそうです)なので、割引計算後、100円未満の端数は50円単位に切り上げ・切り下げしなければなりません。100円未満の端数が25円から74円までのときは「50円」に、75円から24円までは「100円」にするルールなのですが、まだピンと来ませんね。

例を挙げると、割引後の額が22,335円であれば22,350円に、13,579円であれば13,600円に、12,121円であれば12,100円にと、50円単位にそろえることです。いわば「四捨五入」の応用形なのですが、どうも文系学生には感覚的に分かりにくかったようで、おまけに私も純文系につき、講義で苦労した思い出があります。

なお、ローカル線区間の端数処理は10円単位(通常の四捨五入)でした。よって、幹線とローカル線の区分も理解しておかなければなりません。その他に「ジェット特別料金」というものもあり、割引計算では必ず差し引いて計算しなければならない重要なものもありました。

時は流れ、国内航空運賃も自由化がどんどん進み、認可制から各社自由の届出制となって、今や大手2社で違いはますます大きくなるばかりです。「共通ルール」というものはどんどん少なくなってきています。

振り返ってみると、やっかいな運賃計算問題がなくなった点(払い戻し計算はありますが)は、学習する側の負担が相当に減ったといえます。一方で、現在はJALとANAごとにしっかり区別して覚えなければならないことが激増しています。かつては計算力が、現在は暗記力が問われる問題に変貌を遂げたといえるでしょう。