旅行業務取扱管理者スペシャリストによるこっそり裏講義

旅行管理者試験の学習を始めている方はご存知でしょうが、
そもそも旅行業法には「添乗員」という言葉は存在しません。
(旅行業者自身も広告など外部に対しては、「ツアーコンダクター」とか「ツアーディレクター」などと表記しています。)

添乗員の役割をする人の名称は、旅行業法では「旅程管理業務を行う者(条文タイトル)」と呼び、
一定の要件だけを定め、詳細は旅行業法施行規則で具体的な旅程管理業務の内容や
それを行う者の実務経験などを定めているという関係です。

この制度の中で、現在、添乗員の多くは先ず添乗員派遣会社に登録し、
その後、社内研修や登録研修機関での研修、簡単な実務経験を経て資格取得後、
実際の業務に就くことになります。(旅行会社の社員が添乗業務を行うこともあります。)

これらの添乗員の中には「カリスマ添乗員」と呼ばれる方もいて、
その方が添乗するツアーはすぐに定員に達するそうで、営業に大きく貢献しています。
これほどでなくても、技術、接客態度等が優れている方は多くの客さんを掴み、商品としての旅行の価値を高めています。

ただ、仕事は大変です。ツアーの日程の都合で、
早朝から夕食が終わるまで気の抜けない日もあるでしょう。
(その代わり、帰国便が朝に着き、そのまま解散という日もあるでしょうけどね。)
いずれにしても、ツアーの最初から最後まで何かあったときには対応する責任があります。
24時間勤務といったら大袈裟ですが、通常のデスクワークに比べるとかなり不規則な仕事です。

このような添乗員の業務時間について、標準旅行業約款では
「添乗員その他の者が同項の業務に従事する時間帯は、原則として八時から二十時までとします。」
とおおまかに規定していますが、より具体的には労働基準法38条の2で規定する
「事業場外労働のみなし労働時間制」が適用されています(いました?)。
 (参照条文)
§38の2 労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、
労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。 (以下略)
 (1日の大半を顧客回りに費やす営業マンなどが典型的な例です。)

この規定によって、添乗員には「日当」という形で1日あたり数千円~一万数千円が支払われます。
しかしみなし労働時間制の場合、あらかじめ「一定時間働いたとみなす」わけですから、
残業時間は原則として「みなした」時間に含まれていることになりますので、残業代は支払われません。

ところが、数年前に「事業場外みなし労働時間制」の適用は不当として、
関西の派遣添乗員が未払い残業代などの支払いを求め訴訟を起こしました。
この裁判は最高裁まで争われ、今年の1月に判決がありました。

判決の内容は、添乗員たちの言い分を認め「添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが
困難であったとは認め難く、残業代などを支払うべき」とのものでした。

なぜなら、「事前に会社から詳細な指示があり、また実際に遂行した業務については
日報に発着地、出発・到着時刻等を正確かつ詳細に記載して提出し、
報告することが義務付けられていること等」からみなし労働時間制ではないというものでした。

この結果、いくつかの会社では添乗員の報酬を
「日当制から時給制」に移行する予定だそうです。
ただ、時間給制度は時間単価の設定によっては実質的に賃下げにつながりやすいことから、
問題がないわけではありませんよね。

大変難しい問題に取り組まなければなりませんね。

※“道場破り”に、「2014年教材訂正」というファイルを掲載しました。
最近の改正情報やテキストの訂正等を記していますので、是非ご活用ください。



相馬隆幸

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