旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

総合旅行業務取扱管理者試験実施結果の分析

昨年の12月14日に、令和3年度の総合旅行業務取扱管理者試験(10月24日実施)の合格発表がありました。
今回は、日本旅行業協会が公開した実施結果を分析してみます。試験直後に公開した弊社の講評もご参照下さい。

令和3年度の受験申込者総数は8,356名で、コロナ禍のためか前年より約3,600名減少しました。
このうち試験区分A(全科目受験者)は3,663名、試験区分E(国内旅行業務取扱管理者有資格者)受験者は2,497名でした。

注目すべきは合格率です。全科目受験者の合格率は6.2%で、平成9年(1997年)に現行試験制度になって以来、最低を記録しました。
1ケタとなるのは、平成29年(2017年)の8.8%以来2回目です。令和2年は18.5%の合格率でしたので、一挙に1/3に激減したことになります。この極端な落差も過去にないことです。
また、科目免除(国内有資格)受験者は同17.6%で、前年(38.6%)の半分以下となりました。
こちらも現行試験制度になって過去最低であり、20%を割り込んだのも初めてのことです。

低合格率の原因は、明らかに旅行実務科目が難化したことにあります。国内旅行実務、海外旅行実務とも、過去問題にないレベルのマイナーな問題が目立ちました。
例年、必ず意図的な難問はあるものですが、今回はその出題数が多く、一部には出題意図に首を傾げざるを得ない問題も散見されました。
試験後は、SNS上で嘆きや怨嗟の声も多く見られ、いつにない異例の状況となりました。

受験区分のうち、国内旅行実務と海外旅行実務が免除(法令・約款若しくは約款のみの受験)であった受験者の合格率は、前年とほとんど変っていません。
つまり、実務科目を含めて受験した人が軒並み低合格率となったわけであり、いかに実務科目の難度が高かったがわかります。

今後の試験はどうなるのか。率直に言って、これほど劇的に傾向が変わると、今まで「重要」「必須」と位置づけられていた知識も確信が揺らぐものです。
また、今回出題された超難問レベルを、どのように学習していけばよいのか、どこから(どこまで)手を付ければよいのか、迷いが生じることでしょう。

しかし、すべての問題が「難問」というわけではありません。難しかった海外旅行実務でも、少なくも6割は並レベル、若しくはやや難しいレベルで、いわゆる「コア」と位置づけられる問題です。これらのコア問題で絶対にロスしない力が、これからは一層強く求められるでしょう。
超絶難問は、まったく意識する必要はありません。過去にも、一度出題されただけでその後は出題されていない超難問があります。

また、我々受験指導にあたる側も、今回の問題内容を「想定外」などと他人事にしてはならず、
コア問題をより一層受験者の方々に理解していただくために、反省と努力を重ねなければなりません。
毎年の試験後にはさまざまな反省事項が生じますが、今回はひとしお強くその責任を感じています。

最後に、合格率が1年で3倍も違うような試験問題では、国家試験としての品格が問われます。試験を実施する側にも、最善の努力を期待いたします。