旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

法律文の読み方

いきなりタイトルと矛盾する言い方になりますが、旅行業務取扱管理者試験に合格するためには、ナマの法令を読む必要はありません。テキストを理解し、問題集の記述に見慣れれば十分です。
また、ナマ条文は日常の文章とかけ離れた用語や記述が多く、理解に苦しむものもあります。まったく試験で問われない条文も数多くあります。
そのため、深読みするとかえってテンションが下がってしまうかも知れません。「百害あって一利なし」とは大げさに言い過ぎですが、そのようなわけで、弊社の教材にはナマ条文を一切載せていません。

それでも、法令にご興味がある方もおられますし、他の資格試験も目指す方もおられるでしょう。
そこで今回は、旅行業法を中心に、法律文の基本的な読み方をご紹介します。ナマの法令は、旅行業協会のホームページ又はe-gov法令検索(https://elaws.e-gov.go.jp)でご覧になれます。
あくまで、合格のためには敢えて「不要」と言っていいので、読み流してもらってかまいませんよ!

1 条文の構成

法律にはいくつもの条文がありますが、条文は更に関連するいくつかが集まって「第○章」と、章を構成しています。旅行業法の場合は、第1章から第5章までの5つの章から成り立っています。

また、「条」の下には、更に細かな区分けとして「項」があり、更にその下に「号」があります(項、号が含まれない条文もあります)。
章はあまり気にしなくてかまいませんが、「第○条第○項第○号」という呼び方はよく使われます。
更に「条」には、「第○条の○」と書かれているものがいくつかあります。このような条文は、法改正により後から追加された条文で、その前の条文に関係があり、グループをなすものがほとんどです。これらはその前の条文に付属する(下位の)ものではなく、それぞれ独立した条文です。
なお、「条」と「号」は、「第1条」「第1号」から順に並んでいますが、「項」だけは「第1項」とは表示されず、「第○条」に続いて、いきなり文章から始まっています。

2 条文例

(禁止行為)
第十三条 旅行業者等は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 第十二条第一項又は第三項の規定により掲示した料金を超えて料金を収受する行為
二 旅行業務に関し取引をする者に対し、その取引に関する重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
2 旅行業者等は、旅行業務に関し取引をした者に対し、その取引によつて生じた債務の履行を不当に遅延する行為をしてはならない。
3 旅行業者等又はその代理人、使用人その他の従業者は、その取り扱う旅行業務に関連して次に掲げる行為を行つてはならない。
一 旅行者に対し、旅行地において施行されている法令に違反する行為を行うことをあつせんし、又はその行為を行うことに関し便宜を供与すること。
二 旅行者に対し、旅行地において施行されている法令に違反するサービスの提供を受けることをあつせんし、又はその提供を受けることに関し便宜を供与すること。
三 (略)
四 (略)

上の例で、アラビア数字(2,3)が「第○項」を示しています。
第1項は、「第十三条」の後にすぐ続く、「旅行業者等は…」以下の文章がそうですが、慣例により第1項の項番は省略されます。また、漢数字(一、二、三)は「号」を表しています。
第1項第3号では、この項に規定されていることだけでなく、第12条第1項又は同条第3項も参照する必要があります。他の条文と関連をもつ条文がかなり多いのも、法律文を読みにくくしている要因です。

なお、府令や省令では、「号」の下に更にア、イ、ウ…や、(1)、(2)…が続くものもあります。
また、条文内にある「よつて」「あつせん」など、通常は「よって」「あっせん」と促音となる「つ」を小さくせず、大きな字で表すのも法令文の慣例です(これも、ちょっと読みにくいです)。

3 原則と例外

条文のほとんどは、「…しなければならない」または「…してはならない」と記述されています。
どういう場合にそのような規制を受けるのかを具体的に把握することが第一ですが、多くの場合にその規制を受けない例外もまた規定されています。条文で、末尾に「ただし…」とあるのは、たいてい例外規定となっています。
また、一部の条文にある( )内の文章も、ほとんどが例外規定です。国家試験は、「原則」だけでなく、「例外」についてもしっかり把握しておかないと正答できません。

実際のところ、問題で条・項・号が問題文に含まれることがありますが、「これは第何条の規定か」などと、条番号そのものが問われることはありません。
問題文に含まれていても、ほぼ無意味です。
あ・く・ま・で、ご参考に、という程度でお読みいただけたら幸いです。