旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

ヤッカンはヤッカイ?! -その1 契約書面の交付

最初から寒〜いギャグですみません。でも、約款は厄介ではありませんか?
実は、昨年の講座で、受講生の方から頂いた質問数では、約款に関するものが最も多かったのです(次いでJRや国際航空運賃の計算系。これは納得ですね)。
よほど法令のほうが、記述や用語などがわかりにくいようにも感じますが、何と質問数では、約款は法令の約3倍もありました。
約款の文章そのものは法令と比べて読みやすいものの、とにかく量は多いし、まぎらわしい規定や事項が多いことが原因ではないかと思います。
そこで今月のブログは、受講生の方々から頂いた色々な疑問を、Q&A形式で取り上げてみました。
初回は、旅行業法と違っているナゾの規定について。

Q.契約書面について、旅行業法では、乗車券類、宿泊券その他の旅行サービスの提供を受ける権利を表示した書面を交付するときは、契約書面は交付しなくてよいと定めてありますが、企画旅行契約の約款ではこのことが明記されていません。なぜでしょうか?

A.ご疑問の事項は、法令、約款それぞれで規定が異なっている、唯一の珍しい規定です。
契約書面について、旅行業法では、第12条の5において、基本的に交付が必要であるが、例外として、旅行サービスの提供を受ける権利を表示した書面を交付するときは、書面の交付を要しないと定めています。
一方で、標準旅行業約款では、契約書面の交付に関して、募集型・受注型企画旅行契約と手配旅行契約で以下のように条文が異なっています。

■募集型企画旅行契約・受注型企画旅行契約
(契約書面の交付)
第九条 当社は、前条の定める契約の成立後速やかに、旅行者に、旅行日程、旅行サービスの内容、旅行代金その他の旅行条件及び当社の責任に関する事項を記載した書面(以下「契約書面」といいます。)を交付します。
■手配旅行契約
(契約書面)
第十条 当社は、手配旅行契約の成立後速やかに、旅行者に、旅行日程、旅行サービスの内容、旅行代金その他の旅行条件及び当社の責任に関する事項を記載した書面(以下「契約書面」といいます。)を交付します。「ただし、当社が手配するすべての旅行サービスについて乗車券類、宿泊券その他の旅行サービスの提供を受ける権利を表示した書面を交付するときは、当該契約書面を交付しないことがあります。」

手配旅行契約では、「 」で囲った「ただし書き」で、交付を省略できる場合の例外規定が明記されており、旅行業法の定め通りです。
しかし、企画旅行契約の条文には、この例外規定がありません。そのため、「企画旅行契約においては、例外なく、契約書面を交付しなければならない」ということになります。これは旅行業法の規定と異なりますが、約款の規定のほうが旅行業者にとって厳しく、より明確に旅行者の権利の保護を図るという趣旨なので適法です。
また、企画旅行契約で定められている旅程保証では、契約書面の記載事項の変更が適用基準となっていますので、契約書面がなくては「重要な変更」の判断が困難になります。
結局、条文解釈上、旅行業法令の問題としては「交付を省略できる場合がある」、しかし約款の問題では「企画旅行契約では必ず交付しなければならない」と、ダブルスタンダードとなっているのが現状です。
そのため、乱暴な言い方になってしまいますが、「法令は法令、約款は約款」と割り切ってご理解ください。

ちなみに、書面の交付の省略について、旅行業法では時おり問題が出されています。
しかし、約款では手配旅行契約の問題としてのみ出されており、企画旅行契約に関する問題としては出題されていません。
おそらく、上記の条文上の相違点があるために出題しにくいのかと思われます(出題したら疑問や抗議が殺到するでしょう)。