旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

総合試験直前のヒント(3)-「JRの料金計算-2」

JR料金計算の裏技、覚えていただけましたか?
裏技も正攻法も、アプローチが違うだけで、どちらも大切です。
自分に合ったやり方になじんでください。
さて、第3回は「山形・秋田新幹線」です。
これが出題されるときは難かしいものと腹を決めましょう。

その理由は、この区間にしかない複数の特例です。
特例を確実に理解していないと、なかなか正答は難しいものです。
とはいえ毎年出されるものではなく、2〜3年に1度くらいの頻度で、最近10年間では、
平成25〜27年度と3年連続(異例)出題された他は、29年度に出題されたのみです。

-ということは、そろそろ出題されるかも?
そんな疑問も湧いたので、今回は敢えてこのテーマです。
チャレンジ課題として学習してほしいのですが、こだわり過ぎないようにしてください。
最悪でも、「失うものはこれだけ」にしましょう!

★難問!-平成29年度 国内旅行実務 問28(問題集03 88,89ページ Q5−1)
この問題は、数ある過去問題の中でも難問中の難問です。

平成29年度は、この他にも難問が多く、国内旅行実務全体が難しい年でした。
結果的に全科目受験者の合格率は8.8%と、近来まれに見る低合格率となりました。
この問題が難問のわけは後ほど。他に、もっと解きやすい問題を解説します。

●平成27年度 国内旅行実務 問29(問題集03 96,97ページ Q5−5)
「もっと解きやすい」と言いましたが、JR全体の中では難しいレベルに入ります。
しかし、山形・秋田新幹線の問題としては中程度ととらえてください。
過去に、最も出題が多いレベルの問題です。
山形・秋田新幹線には、以下の多数の特例があります。
①直通・乗り継ぎを問わず、東北新幹線区間と在来線区間別々に特急料金を適用する。
②在来線区間には、東北新幹線とまたがって利用する場合の特急料金
(以下「またがり」特急料金)を適用する(通常のA特急料金は適用しない。
乗継割引も適用不可)。
③閑散期・繁忙期に普通車指定席
利用するときは、「またがり」特急料金±140円
グリーン・普通車自由席を利用するときは、「またがり」特急料金-380円
⑤グリーン車を同一方向(上りから上り、
下りから下り)で利用するときは、全区間通しのグリーン料金を適用する。
※ 東北新幹線区間の特急料金は、③、④の場合には通常どおり±200円、-530円。

上記のルールの理解が、正解にたどり着く道です。

これらは、山形・秋田新幹線独特のものなので、
「ここにはこのルール」と割り切って覚えることです。
それでも、山形・秋田新幹線ならではの「間違いパターン」があります。
カギを握るのは、±140円と-380円です。
グリーン車を利用する場合は、更に⑤のルールが大切です。
選択肢を見てみましょう。

まずは、全行程でグリーン車を利用しているので、
③より、「またがり」特急券(1,230円)からは、380円を差し引かなければなりません。
a.とb.は、通常の530円を引いていますので、この二つは即座にアウトです。
一挙にダブルプレーですね。

残るc.d.は、1行目の式(特急料金)はまったく同じです。
違いは、2行目のグリーン料金です。

この行程は、東京から山形まで全区間下りの同一方向です。
よって、グリーン料金は、東京〜山形の全区間が通しの料金となります。
d.は新幹線区間と在来線区間に分割して計算していますので、これもアウト!です。
よって、残るc.が正解です。P.100のQ5-7も同レベルの問題です。

●その他の注意点
・「引っかけ」のため、
通常のA特急料金も併せて資料に明示されることがある。
A特急料金は、奥羽本線内のみ(又は田沢湖線・奥羽本線内のみ)を利用する場合に
適用するものであり、東北新幹線にまたがる場合には適用してはならない。
・「またがり」特急券に乗継割引を適用している場合も誤り
÷2、×1/2とあったら「×」。
・普通車指定席を利用しているときは、
「またがり」特急券から140円を加減しているか確認する。
P.62のQ3-11は普通車指定席利用だが、
仙台〜盛岡で特急料金の差額計算が必要なので、1ランク難しくなっている。

★「難問!」はなぜ難問なのか(問題集03 88,89ページ Q5−1)
「北上〜福島間はどっち向き?」
ここまでお読み頂いて、改めてQ5−1を見てみましょう。
上の問題との違いがおわかりでしょうか。
一見、同じような問題に見えますね。

ところが大きな違いがあります。
それは、この行程は、上りから下りに乗り継いでいるという点です。
北上〜福島間は、東京方面に向かう上り列車です。
一方、福島〜米沢間は下り列車です。
つまり、同一方向の利用ではありません。
このため生じる、唯一にして最大の違いは、
グリーン料金は全区間通しの料金が適用できないということです。

上りか下りか、区間の方向がわかっていないと解けません。

東京発着ならわけはないのですが、
地方都市の並びを覚えるのは簡単なことではありません。
そのため、うっかりグリーン料金を通しで計算してしまい、
b.を選んだ方も多かったことと思います。

まあ、こういう行程の旅行もないことはないでしょうが・・・
どうも私には、受験者の弱みを狙った、意地の悪い問題に見えてしまいます。

このパターンの出題の可能性は低いでしょうが、
科目・分野を問わず、どこかの問題には必ず意図的な難問があるものです。
気を付けていればケアレスミスを防ぐことはできますが、
「悪意」ある問題は、なかなかそう簡単にはいきません。
難問にこだわり過ぎないことも大切です。