旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

試験に“出ない”旅行業法の話

いきなり“こっそり裏講義”のタイトルに矛盾する感じですが、まだ本試験にはたっぷりと期間がありますので、ちょっと横道にそれてみます。

旅行業法で、試験に出される条文は、全体の半分以下です。残りの半分強の条文は、まったく出題されていないか、又は10年〜20年に1度、それも選択肢1つ程度が辛うじて出題される程度です。そのため、テキストでは解説を割愛するか、簡単に述べる程度におさめています。

それでは、その部分にはどんなことが定められているのでしょう。

こう書くと少し気になるかも知れませんね。いえ、全然気にしなくてかまいません。試験対策としては、完全に無視してよいところです。とはいえ旅行業法を構成するものではありますので、簡単にその中味をご紹介しましょう。

なお、旅行業法全条文は、「e-Gov法令検索」で検索して読むことができます。関連する国土交通省令もこちらでご覧になれます。また、旅行業協会のホームページにも掲載されています。

e-Gov法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0100/

1.登録制度

旅行業者等が、事業を廃止、全部譲渡、分割したときには、登録行政庁への届出が必要です。

また、個人営業している旅行業者で、登録を受けていた者が死亡したときは、事業の存続が深刻な課題となります。この場合は、相続人が改めて登録の申請を行うことが必要になります。登録の可否の通知があるまでは、事実上の無登録状態となりますが、特例的に、その間も事業を継続することができます。併せて、営業保証金についても承継することができます。家族で経営しているような零細業者への救済規定です。

2.営業保証金制度

① 営業保証金の権利の承継

前項で旅行業者が死亡した場合に、営業保証金も承継できることを書きましたが、それには一定期間内に登録行政庁に証明書類を添付して届出をしなければなりません。ただし、相続人が新たに登録を受けたことが前提です(登録を受けられなければ、事業は継続できません)。

承継する者は、同時に前旅行業者の債務も引き継ぐことになります。よって、前旅行業者と取引をして、債権を有する旅行者は、承継者が引き継いだ営業保証金から還付を受けることができます。旅行者の債権保護のための規定です。

② 営業保証金の保管替え等

営業保証金は、「主たる営業所の最寄りの供託所」に供託することになっています。この規定には例外がありませんので、主たる営業所が移転して、最寄りの供託所が変更になるときは、営業保証金を移し替えなければなりません。この手順は、供託している営業保証金が現金のみであるか、有価証券を含むかで異なりますが、詳細は省略します。

3.旅行業務取扱管理者

法令には、旅行業務取扱管理者試験についても定められています。受験をめざす皆さんは、もう詳細をご存知でしょうから、詳細は省略します。

4.登録研修機関

企画旅行に同行する、旅程管理業務を行う主任の者(主任添乗員)に必要な、旅程管理に関する研修を行う機関に関する規定です。旅行業法の中でも相当なボリュームを占めているのですが、旅行業務取扱管理者には直接関係のないものであるため、試験ではまったく出題されていません。

旅程管理業務の研修機関は登録が必要で、登録基準、欠格条項も定められています。その他、事務規程、業務改善命令、登録の取消し等も詳細に定められています。

4.旅行業協会

試験では、苦情の処理、弁済業務を中心とした協会の法定業務が問われていますが、その他にも多数の規定があります。協会の指定要件と指定の取り消し、事業計画、役員の選任などなど、これまた微細にわたって定められています。また、協会の試験事務代行については雑則に定めがあります。

5.罰則

法令に違反した者への罰則が細かく定められています。罰金最高刑の「100万円」という額は、稀に出題されることがありますが、その他は出されていません。登録制度違反にかかわる罰則は、相対的に重くなっています。

以上、試験に“出ない”旅行業法の解説でした。ご興味のある方は、全条文をご覧になってください。ナマの法令文は「これでも日本語かっ」と思うほどややこしいものです。頭痛がしても当方は責任を持ちません。ただし、試験勉強には余り役立たないことは保証します。

なお、今まで出題されていない個所でも、法改正があると出題されることがあります。最近では雑則・罰則関係の一部がそうでした。「道場破り」で提供される改正情報にご注意下さい。