旅行業務取扱管理者講座の講師ブログ

旅行業法令の用語解説(1)

テキストや問題集を読んでいると、普段見慣れない法律文独特の用語や言い回しが出てきます。用語の意味そのものが直接問われるような問題はありませんが、日常的でない表現に戸惑いを覚えることも多いでしょう。ご自分で調べてみるのも記憶定着に効果的ですが、少々面倒ですね。そこで今回からは、いわゆる専門用語や、重要な表現などを中心に、その意味や注意点を解説します。

①「旅行業」とは

「旅行業」とは、報酬を得て、一定の行為(旅行業務)を行う事業をいいます。この3要件をすべて満たせば「旅行業」に該当し、登録を受けることが必要となります。報酬を得ることと、事業の意味はよろしいと思いますが、何が旅行業に該当するのか、まるで禅問答か謎々のようで、試験勉強を始めて最初にぶつかる壁ではないかと思います。

簡単にいえば、旅行者を相手に、海外のパッケージツアーからJRのきっぷや航空券まで、旅行に関する仕事を取り扱うのが、早い話が「旅行業」です。旅行業務を行っているのであれば、旅行業の登録が必要となります。

いいかえれば、旅行業務とは、旅行サービス提供業者と旅行者の間に立って、両者を代理して旅行サービスの提供と受領を取り持つことです。「代理」していることがキモで、JRや旅館のように、直接旅行サービスを提供することは、旅行業務ではありません(このことは、試験で非常によく出されます)。

また、旅行業務にあたらない例外も定められており、旅行業務とまぎらわしい行為もよく出題されますので、できるだけ具体例で覚えてください。

②「代理・媒介・取次」

旅行業務の定義に関する問題で、ときおり見られる用語です。結論から言うと、全然気にしなくてよいもので、旅行業務に関する取引の形態の別により「代理」・「媒介」・「取次」の3通りがある、と頭の片隅に置いていただければ十分です。

ここでは「代理」を中心に、さらりとご説明します。

・代理

一般に、「旅行代理店」と呼ばれるほどですから、旅行業者は、代理業務をメインに行っています。詳しく言いますと、旅行業者は、旅行サービスの提供機関から代理権を与えられ、旅行者との間でその旅行サービスの提供に関する契約を締結します。旅行業者は、旅行サービス提供業者「本人」ではなく、その「代理人」という立場です。

契約は旅行業者と旅行者との間で締結されますが、契約上の責任・義務等は、旅行サービスの提供機関が負います。旅行者から代金を収受して、航空券やJR券等の代理販売、宿泊クーポン券の交付を行うことが代表的な例です。ほとんどの旅行業者は、もっぱら代理行為を行っています。

・媒介

旅行業者が旅行者の委託を受けて、宿泊機関の紹介を行い、旅行者が宿泊機関に料金を支払って利用する例が該当します。代理とは異なり、宿泊契約は、旅館・ホテルと旅行者の間で締結されます(宿泊代金の支払いも直接行われます)。

・取次

旅行業者が旅行者の委託を受けて、自己の名で貸切バス業者と契約を行う例が該当します。バス代金は旅行者が負担しますが、旅行業者は自ら契約の当事者となって、貸切バス業者と運送契約の締結を行います。

※このほか、旅行業法には「利用」という形態も定められていますが、実際の旅行業務では行われていません。

③省令・府令・政令

どれも国が出す命令で、出どころの違いが名称の違いです。試験対策としては、単に、旅行業者等や旅行サービス手配業者が従わなければならない国の命令と覚えておけば十分です。一応、以下にその違いを述べます。

・省令…監督行政庁の観光庁が属する国土交通省が出す命令で、「旅行業法施行規則」をいいます。

・府令…消費者庁が属する内閣府が出す命令で、「旅行業者等が旅行者と締結する契約等に関する規則」をいいます。

・政令…内閣が制定する命令で、「旅行業法施行令」をいいます。行政府が出す最上位の命令です。

それぞれの優先順位は、次の通りです。 法律(旅行業法)>政令>省令・府令

※法律、政令、省令・府令をひっくるめて「法令」と呼びます。

理屈っぽい話が多くなりましたが、最初に述べたように、上記の1つ1つの意味が直接問われることはありません。およその意味をつかんでいただければ十分です。

今回は、ここまで!